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【ビューティテック最前線】第18回:仏Viva Technologyにみる 美容とファッション分野の最先端(国際商業8月号)

July 29,2019

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アイスタイルでは、ミッションである「ビューティ×ITで世界ナンバーワン」の実現を目指してグローバルに事業を展開しています。その中で、昨今世界の美容業界で盛り上がりを見せるBeautyTechの動向には以前から注目してまいりました。海外のグループ会社も増えてグローバルトレンド情報もいち早く入ってくるようになり、これらの情報を何らかの形で発信できないだろうか、そんな議論を積み重ね、@cosmeの編集ノウハウを活かす形で新たなメディアとして、今世界の美容業界で話題のBeautyTechを中心とした美容業界のイノベーショントレンドを配信する専門メディア「BeautyTech.jp」を立ち上げました。

そんな「BeautyTech.jp」の編集部は、「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「ビューティテック最前線」というタイトルで連載させていただいています。

国際商業とは
1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。
http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

 

今回は2019年7月7日発売、国際商業8月号に掲載されたものをご紹介します。

仏Viva Technologyにみる美容とファッション分野の最先端

欧州最大規模のテクノロジーイベント、Viva Technology(通称ビバテック)が今年も5月16日から3日間で行われた。フランスは国を挙げてスタートアップを支援しており、同イベントには、マクロン大統領も参加。大企業がスタートアップと出会う、あるいはすでに手を組んでいるスタートアップと共同開発したプロダクトやサービスを、世界に向けて発信する場となっている。
4回目にあたる今年は125か国から過去最多の1万3,000社のスタートアップが集まり、200のセッションに約450人が登壇した。このなかにはアリババ創業者のジャック・マー氏、IBMのCEOジニー・ロメッティ氏などの姿もあった。昨年はフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏やマイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏らが登場しており、テクノロジー企業の大物経営者をスピーカーとして招聘し、巻き込んでいくところには「フランスをスタートアップ大国にしたい」と宣言したマクロン大統領の本気度が伺え、その勢いは年々増している。来場者は3日間で前年比24%増の12万4,000人だった。
美容業界からは昨年に続き、ロレアルが会場内でもひときわ目立つ巨大ブースを出展した。

初日にステージで語り合うマクロン大統領と欧州で活躍する5人の起業家たち(撮影/谷素子)

ロレアルが追求し続けるパーソナライゼーション

2018年に史上最高の売上を記録したロレアル。早期からデジタル戦略を進め、さまざまなトライアルを重ねているが、今回の大きなテーマのひとつがパーソナライゼーションだ。
ランコムからは「Shade Finder(シェード・ファインダー)」という、肌質や肌トーンをAI技術で分析し、個人個人にあった最適なファンデーションを提案してくれるサービスを披露した。分析には専用デバイスを使う。2019年以内に、世界1,000店舗以上で展開予定だという。
パーソナライゼーションサービスでは、個別の処方にもとづく生産体制が課題になるが、今回は、その量産技術である「My Little Factory」も明かされ、パーソナライゼーションが当たり前になる未来を見越しての準備が着々と進んでいることをうかがわせた。
CES2019でも肌のpH計測ができるウェアラブルデバイスを発表したラ ロッシュ ポゼは、今回は中国向けのパーソナライゼーションサービスをアリババとともに開発し、中国でのみ展開されるニキビ肌用の分析アプリ、「Effaclar Spotscan(エファクラ・スポットスキャン)を発表した。ニキビに悩む若者向けに、肌の状態を4段階で診断し、予防のためのアドバイスと、それぞれにあったラ ロッシュ ポゼの製品が提案される。将来的にはアプリで医師との会話やクリニックの予約も可能になるという。

リアル店舗での体験も「行きたくなるもの」へ

その一方で、ロレアルCEOのジャン=ポール・アゴンと、CDOのルボミラ・ルシェットは、このビバテックにおけるセッションにて、Eコマースに力を入れるだけでなく、ドラッグストアやスーパーマーケット、デパートなど小売店との協働がこれからも大切であることを力説。リアルな売り場に「行きたくなる」顧客体験に取り組んでいることを強調した。
その意味では、同社が2018年に買収したAR企業 ModiFaceによるバーチャル・ヘアアドバイザー体験機能もそのひとつかもしれない。ブースの展示では、鏡のように壁に設置したタブレットに話しかけると、タブレットに映る自分の映像の髪の色が変わり、さまざまな色を試すことができる。いままでは画面上で試したい色をタッチする必要があったが、ボイスアシスタント機能で音声指示ができたり、髪の毛一本一本までとらえた立体感、トーンやニュアンスの再現などの進歩をうかがわせた。最後には、ロレアル・プロフェッショナルの専門家から、アドバイスも得られる。

ルイ・ヴィトンは映像バッグからブロックチェーンまで

ロレアルと同じく巨大なブースを出展したLVMH。美容もさることながら、ファッション分野でのテクノロジー活用が人々の目をひいた。ルイ・ヴィトンは、ニューヨークで2019年5月のクルーズコレクションで初披露し大きな話題となった映像が流れるバッグを披露した。使用されているフレキシブルディスプレイは、米国を拠点とする中国のスタートアップRoyoleが開発しており、薄く柔軟性が高い。専用アプリでバッグの表面に思い思いの写真や映像を映し出すことができる。Royale社のWebサイトによると、Tシャツや帽子などにも応用可能とのことで、これもパーソナライゼーションのひとつの形だろう。
ルイ・ヴィトンはデザインにテクノロジーを活用するだけでなく、トレーサビリティの観点からブロックチェーンによる電子証明書も発行している。開発したのは、ブロックチェーンのスタートアップConsenSysとマイクロソフト、LVMHのコンソーシアムチェーン「AURA」だ。製品の生産、発送、購入までのすべての工程が記録され、電子証明書として商品購入時に発行される。二次流通しても、次の持ち主の記録が残る。本物か偽物かもシリアル番号で判断できるため、偽造品の横行を防ぐ手段として注目されている。
フランスは、スタートアップの資金調達額においては、2017年のデータでは英国、ドイツに続き欧州内で3位だがビューティテック、ファッションテックの分野においては、スタートアップたちにとって間違いなく世界のトップ国であり、目指す場所であり続けるに違いない。

 

 

BeautyTech.jp編集部
谷素子、大塚愛
https://beautytech.jp/

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国際商業 2019年8月号より転載

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美容業界の国内外のイノベーションを発信するメディアです。
美容業界におけるイノベーションを、テクノロジー 、マーケティング 、サイエンス、ビジネス などのキーワードで、あるいはビューティと近しい領域のファッションやヘルスケアのテクノロジー関連のトピックスも取り上げ、美容という領域のみならず広くカバーしてまいります。

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