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【ビューティテック最前線】 第15回:CES2019で美容企業が示したさらなるパーソナライゼーション(国際商業5月号)

April 8,2019

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アイスタイルでは、ミッションである「ビューティ×ITで世界ナンバーワン」の実現を目指してグローバルに事業を展開しています。その中で、昨今世界の美容業界で盛り上がりを見せるBeautyTechの動向には以前から注目してまいりました。海外のグループ会社も増えてグローバルトレンド情報もいち早く入ってくるようになり、これらの情報を何らかの形で発信できないだろうか、そんな議論を積み重ね、@cosmeの編集ノウハウを活かす形で新たなメディアとして、今世界の美容業界で話題のBeautyTechを中心とした美容業界のイノベーショントレンドを配信する専門メディア「BeautyTech.jp」を立ち上げました。

そんな「BeautyTech.jp」の編集部は、「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「ビューティテック最前線」というタイトルで連載させていただいています。

国際商業とは
1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。
http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

今回は2019年3月28日発売、国際商業5月号に掲載されたものをご紹介します。

CES2019で美容企業が示したさらなるパーソナライゼーション

毎年1月に米国・ラスベガスで行われる世界最大級のテクノロジーショー「CES」。1年のテクノロジートレンドを占う見本市として、世界各国から業界関係者が集まる。今年は、ビューティテック専用エリアこそなかったものの、巨大ブースを初出展し注目を集めたP&Gに始まり、大手企業からスタートアップまで数多くのビューティテック関連製品が展示され、あちこちで人だかりがみられた。熱心に担当者に質問する参加者も多く、2019年のビューティテックトレンドが各展示で垣間みえた。

大手各社も本格参入を示した、パーソナライゼーション、D2C

美容大手からは、ロレアル、P&G、ジョンソン・エンド・ジョンソンが自社製品を紹介。各社の製品内容から見えてきたのは、「パーソナライゼーション」「D2C」「肌分析」という三つのキーワードだ。

 

ロレアルは、敏感肌用のスキンケアブランド「ラ ロッシュ ポゼ」から、pH(ペーハー)値を計測するウェアラブルデバイス「My Skin Track pH by La Roche-Posay」を発表した。人間の肌は一般的に、pH4.5〜6.0の弱酸性とされており、pHバランスが崩れると、炎症反応や皮膚トラブルを引き起こす可能性がある。同製品は二の腕の内側に貼ると毛穴から微量の汗を捕らえ、15分以内に正確なpH値を計測。結果はスマホアプリから確認でき、同時に各ユーザーに適したラ ロッシュ ポゼ製品や使い方などが紹介される。

 

P&Gは、「サイエンスとテクノロジーが交差し新しい製品やサービスを生み出す場」という意味が込められた「LifeLab」という展示テーマを掲げ、複数のグループ企業からなる巨大ブースで、初出展ながら存在感を示した。
グループ会社のSK‒Ⅱは日本と中国で先立って公開したポップアップショップを展示。入り口のデジタルアートでテクノロジー活用への期待を引き出すとともに、肌分析マシン「スキンスキャン」を紹介することで、体験の待ち行列を作った。

 

また、P&G内のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)であるP&G Venturesが出展した画期的な〝デジタルコンシーラー〟「Opté」も、注目を集めた。同デバイスは、青色LEDライトで肌をスキャンし、精緻なアルゴリズムでシミの大きさや形を検知する。そのうえでシミの部分だけを狙ってごく少量のコンシーラーを噴射する。現在はテストマーケティング中で、製品化は2019〜20年を予定しているという。

 

その他、3Dプリンターを使ってカスタマイズできるひげ剃りや、クラウドファンディングでテストマーケティングとPRを行った香りのディフューザー、AIを搭載して力の入れ具合などを確認できる電動歯ブラシなどが出展された。
大手3社のなかで特にユニークなアプローチを示したのが、カスタマイズフェイスマスク「ニュートロジーナ・マスクiD」を披露したジョンソン・エンド・ジョンソンだ。昨年公開したスマホ用の肌分析カメラ「ニュートロジーナ・スキン360」を用いて、鼻の形や目の間の距離といった顔のパーツの測定と、肌状態を分析。その結果をソリューションにつなげた。ニュートロジーナのスキンケアをベースに、五つの有効成分をユーザーごとに配合率を変えた専用マスクを、3Dプリンターを使って個人個人の顔のかたちにあったものを作り上げる。2019年第3四半期を目処に、米国で販売開始予定で、直接自宅に配送するD2Cモデルを採用する。

スマートミラーが大きく進化する「CareOS」

メイクのチュートリアル動画を紹介してるCareOs社のスマートミラー

スタートアップ各社も、斬新なアイディアと高度な技術力で、大手企業に引けを取らないサービスを披露した。なかでも注目株は、フランスのCareOS社だ。テクノロジーでセキュリティ分野等の課題解決を試みるBaracoda社の子会社で2017年に創業したばかりの同社だが、昨年から連続で出展している。

 

昨年のCESでは、バスルーム用に開発された第一段階のスマートミラーを展示したが、今年は一歩進んで、さまざまなビューティやヘルス関連のIoTデバイスをつなげる「CareOSプラットフォーム」構想と、このプラットフォームのハブとなるスマートミラー「CareOS Artémis」を紹介した。

CareOSプラットフォームにつながったサービスは、拡大鏡から視力検査、肌分析、ARによるバーチャルメイク、メイクのチュートリアル、シャワーの温度調節などさまざまあり、ユーザーはスマートミラーを通してこれらのサービスにアクセスできる。

 

想定される設置箇所は、自宅、ホテル、スパ、ヘアサロン、リテールなど。たとえばホテルでは、ミラーに向かい「シャワーを温めて」と話しかけるだけで、IoTシャワーヘッドとつながり湯音調整ができたり、スパではミラーを通じた肌分析結果から、個人の肌質やそのときの状態によってメニューの提案がされる。
美容の小売りの現場では、試してみたいアイテムをミラーの上にかざすだけで、チュートリアル動画が出てきたり、あるいは、バーチャルメイクを楽しむこともできる。このときにも、自分の顔がミラーを通じて認識され、過去に購入した商品履歴などから関連情報を表示するという。

 

 

今回のCESを見て、テクノロジーを通じて、ひとりひとりの「体験」を豊かにする動きがさらに強くなってきているのを感じた。パーソナライゼーションは2019年も引き続き大きなテーマになるだろう。

 

BeautyTech.jp編集部
副編集長 公文紫都
https://beautytech.jp/

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国際商業 2019年5月号より転載

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PROFILE

公文さん

BeautyTech.jp編集部 

東京都生まれ。青山学院大学文学部卒業後、IT関連企業、新聞社勤務を経て、2012年6月に独立。以来、国内外の IT、EC業界を中心に、幅広い分野で取材・執筆を行う。2014年5月にニューヨークに生活拠点を移し、2018年1月に本帰国。現在はBeautyTech.jp編集部に在籍。

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