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【ビューティテック最前線】 第10回:世界的なD2Cトレンド、日本でも台頭するのか(国際商業12月号)

November 13,2018

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アイスタイルでは、ミッションである「ビューティ×ITで世界ナンバーワン」の実現を目指してグローバルに事業を展開しています。その中で、昨今世界の美容業界で盛り上がりを見せるBeautyTechの動向には以前から注目してまいりました。海外のグループ会社も増えてグローバルトレンド情報もいち早く入ってくるようになり、これらの情報を何らかの形で発信できないだろうか、そんな議論を積み重ね、@cosmeの編集ノウハウを活かす形で新たなメディアとして、今世界の美容業界で話題のBeautyTechを中心とした美容業界のイノベーショントレンドを配信する専門メディア「BeautyTech.jp」を立ち上げました。

そんな「BeautyTech.jp」の編集部は、「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「ビューティテック最前線」というタイトルで連載させていただいています。

国際商業とは・・・

1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。

 

http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

今回は2018年11月6日発売、国際商業12月号に掲載されたものをご紹介します。

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欧米のビューティテック、ファッションテックのカンファレンステーマとして、今年はD2C(Direct to Consumer)のトレンドに関わるものが特に多く選ばれていたように思う。
テクノロジーとSNSのおかげで、製造・宣伝・販売コストが大幅に下がり、かつ消費者と直接やりとりできるD2Cは、現代の「通販」「直接販売」だ。美容分野ではどういったブランドが立ち上がり、消費者が支持しているのか。その流れは早晩日本にも来るのか。その考察を今回はしてみたいと思う。

欧米におけるD2Cブランド二つのトレンドとは

欧米において化粧品のD2Cブランドは大きく二つの傾向がある。一つは、大きな影響力を持つセレブやインフルエンサーが自らブランドを立ち上げるケースだ。アイディア提供だけでなく、本人たち自らが企画・商品化・宣伝・販売にコミットしているのが特徴だ。
インスタグラムだけでも1億1700万人(2018年10月現在)のフォロワーを持つカイリー・ジェンナーが商品プロデュースから経営まで手がける「Kylie Cosmetics」は、ブランド設立からまだ2年ほどだが、すでに8億㌦の企業価値を持つ。米国出身で現在はドバイで活躍するカリスマ・メイクアップ・アーティストのフーダ・カタンのブランド「HUDA BEAUTY」の企業価値は5・5億㌦。こうしたセレブたちは、思わず使いたくなるようなアイテム開発、プライベートライフをうまく垣間見させてのファンとのコミュニケーション、いわゆるインスタ映えするような商品づくりと話題に事欠かない。
ブロガーでは、化粧品ブランド「Glossier」を立ち上げた米国のエミリー・ワイスもD2Cスタートアップの代表格だ。人気ブログ「Into the Gloss」のエディターという経歴をもつ。ナチュラルな肌の美しさを重視、やりすぎない健康的なメイクが若い世代に圧倒的な人気で、売上げは数億㌦に達しているともいわれる。

アイディアと理念でブランドを立ち上げる起業家

もう一つの潮流が、強い理念や、今までなかったアイディアを持った起業家たちが、ブランドを立ち上げ、最初は小さくとも着実に消費者の支持を集めているパターンだ。D2Cならではの発想によるサービスも多い。
代表格は、髭剃りアイテムの「Dollar Shave Club」だ。ユーチューブの挑発的な動画を販促とし、広告費が上乗せされて割高な既存品よりも安価な髭剃りの定額購入を提案。これまで15㌦くらいのプライス感覚だった髭剃りを5個1㌦で販売、若い世代の支持を受け、約320万人の会員を獲得し、16年にユニリーバに約10億㌦で買収された。
価格の透明性を高める試みとしては、英国発の「Beauty Pie」というスタートアップがいわゆる生協のような仕組みでの化粧品販売に挑戦している。
これは月額10㌦で会員になるとWebサイトで販売している化粧品を工場出荷額で購入できるサービスだ。たとえばベストセラーのコンシーラー「Incrediblur」は通常価格22㌦(約2400円)に対し、会員向け価格は4・27㌦(約470円)だ。
アパレルの「Everlane」も他社に先駆けてコスト開示をしたことで話題になったが、こちらは価格にある程度のマージンが上乗せされているのに比べ、「Beauty Pie」の場合は、工場出荷額の内訳も明記され会員費で運営を補うことが示されている。会員数は17年6月時点で1万人とされている。

クリーンビューティもD2Cブランドの大テーマ

また、D2Cブランドは、クリーンビューティ(サステナブルに配慮し、天然成分で安全性の高いアイテム)分野にも多い。
縮毛ヘア向けブランドの「NaturAll Club」は、創業者のムーガ・エルティガニが、アボカドなどで手作りしたヘアケアアイテムをユーチューブで紹介したところ、レシピの問い合わせが殺到して製品化。メインアイテムのディープコンディショナーは冷蔵で1週間、冷凍保存で2カ月の使用期間で、常に品薄という。創業者は、17年のフォーブス誌が選ぶ30アンダー30のひとりに選ばれている。
ネイルブランドの「Live Love Polish」もD2Cクリーンブランドのひとつだ。ホルムアルデヒドやトルエンなどの有害物質を含まず、ヴィーガンかつクルエルティーフリー、ユニークな色展開で知られ、フェイスブックで110万人以上のフォロワーがいる。
もちろん日本でも、エトヴォスや「shiro」などの秀逸なD2Cブランドも存在するが、全体としてここまでのムーブメントやトレンドとなっているとは言い難い。
その理由には、アイテムの研究から商品開発まで日本の美容企業の信頼性の高さがあり、かつ確かな品質で低価格なプチプラコスメも多く、ユーザーの満足度が高いことが一つはあるだろう。
また、都市圏であれば小売店も多く、EC購入率が5%程度とそもそも低いことなども背景にある。そんな状況で、有名人やインフルエンサーは直接商品を手がけるよりも、プロモーションに関わるほうがリスクも少ない。こうした理由から、日本はブランドというよりも「パーソナライゼーション」を軸にしたプロダクトのD2Cが台頭してきていると言えるだろう。その紹介はまた次回にしたいと思う。

 

BeautyTech.jp編集部
編集長 矢野貴久子
https://beautytech.jp/

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国際商業 2018年12月号より転載

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PROFILE

170810矢野

BeautyTech.jp編集部

雑誌編集、ネットメディア立ち上げを経て、プロデューサーとして、さまざまなネットメディアの編集、デジタルマーケティングに関わる。
Beauty Tech.jpは、サイト立ち上げ準備からプロデューサーとして陣頭指揮を執っている。10歳の息子との戦いごっこで体力づくりの毎日。

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