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【ビューティテック最前線】
第2回:パーソナライズ化のその先の消費者たち(国際商業4月号)

March 7,2018

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アイスタイルでは、ミッションである「ビューティ×ITで世界ナンバーワン」の実現を目指してグローバルに事業を展開しています。その中で、昨今世界の美容業界で盛り上がりを見せるBeautyTechの動向には以前から注目してまいりました。海外のグループ会社も増えてグローバルトレンド情報もいち早く入ってくるようになり、これらの情報を何らかの形で発信できないだろうか、そんな議論を積み重ね、@cosmeの編集ノウハウを活かす形で新たなメディアとして、今世界の美容業界で話題のBeautyTechを中心とした美容業界のイノベーショントレンドを配信する専門メディア「BeautyTech.jp」を立ち上げました。

そんな「BeautyTech.jp」の編集部は、「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「ビューティテック最前線」というタイトルで連載させていただいています。

国際商業とは・・・

1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。

 

http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

今回は2018年3月7日発売、国際商業4月号に掲載されたものをご紹介します。

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パーソナライズ化のその先の消費者たち

ビューティテックにおける今年の最重要キーワードである「パーソナライゼーション」。前回のこの欄でも少し触れたが、今回は実際にどのようなアイテムが登場してきているのか、そして、今後こういったアイテムが増えてきたときのユーザー体験を考えてみたいと思う。

まず、いよいよこの春には、資生堂が昨年末に発表したOptuneがテスト販売される予定だ。すでにウェブサイト上では、そのβ版の限定販売にあたり、購入希望者の応募ができるようになっている。OptuneはIoT技術を活用したスキンケアシステムで、スマホ用の専用アプリを使い、肌を撮影することで水分量や皮脂量、毛穴、キメの状態などの肌状態から、気分やコンディション、気温、湿度、紫外線量などをクラウドサーバーに集めて分析し、そのデータをもとに、その日のスキンケアに必要な成分を五つのスキンケアカートリッジから量がコントロールされて、専用のマシンから抽出される。

 

このOptuneと似たコンセプトをもつアイテムも、今年1月にラスベガスで行われたCESで発表された。パリに拠点をおくRomy Parisのいわゆるパーソナライズ美容液調合マシンだ。こちらは、肌質、ライフスタイル、生活習慣、ブルーライトに当たる時間などの質問に専用アプリから回答すると、10の成分カプセルから自分の肌トラブル解決に適したカプセルを三つセレクトし、専用マシンでオリジナルの美容液がつくられる。

2018年春からのテスト販売を目指すIoT技術を生かしたOptune

化粧品以外にもパーソナライズ化が進む

資生堂では、2017年1月に、米国ベンチャー企業MATCHCo社を買収もしている。MATCHCoは、スマホアプリを使い、自分で肌を撮影し、肌色にあったカスタムメードのファンデーションをオンラインで購入できるサービスだ。商品には自分の名前も入って送られてくる。現在はベアミネラルというブランドで米国のみで販売されているが、いずれは日本やそのほかの地域でも実用化されていくであろう。

こういった、自宅でその日の体調などでパーソナライズ化してくれるガジェットは、化粧品分野だけではない。やはりCESで展示されていたスマートボトルのLifeFuelsは、全7種類のフレーバーから摂りたいビタミンや栄養成分が入ったポッドを選んで、専用ボトルに装着すると、その場でヘルシードリンクがつくれる。アップルウォッチなどのウェアラブルデバイスとも連携でき、デバイスを通じて収集されたデータをもとに、健康的な生活を送るためのサポートをしてくれる。

 

日本でも、ドリコスが職場で使えるオーダーメイドサプリをつくることが可能な生体センサーを開発。ユーザーはその生体センサーに触れるだけで、体や精神への負担の大きさを推定するスコアが出され、それを元に、サプリメントの量や種類が決定される。スマホアプリを連携させればさらに多くの情報をもとにサプリメントが提供されるのだ。

ベアミネラルのカスタマイズファンデーション。このような箱に入って送られてくる(撮影 公文紫都)

自分だけのアイテムとはいえ、その課題はいくつかある

今年は、こういったパーソナライズ化のためのガジェットやアプリが数多く誕生、実用化されていくだろう。データを集めてパーソナライズ化された商品を提供するブランドもあれば、フィリップスが発表したPhilips Skincare Assessmentのように、ユーザーの肌状態データを分析し、綿密な肌の改善プランを提案するというツールもある。あえて商品の購入とは切り離すことで、ヘルスケアブランドとして顧客の健康管理のサポート役であることを強調しているようである。

 

こういったパーソナライゼーションに敏感なアーリーアダプターたちがどのくらいいるのかは、蓋をあけてみないとわからないが、これだけさまざまなアイテムが出てくると、今度はどれを選ぶかという視点も出てくるだろう。毎日使う化粧品を、季節や体調によって変えたりするのが面倒だからパーソナライズ化してほしかったのに、そのツールを慎重に選ばなくてはならないという皮肉も出てくる。フィリップスのアプリのように、分析とアドバイスだけで商品は要らないというニーズも大きそうだ。

 

また、まだまだ専用マシンの大きさやデザインにも課題は残る。小さくはないツールを部屋にいくつか置くことを想像すると、もう少し様子見という女性も多いだろう。スマホは関連アプリだらけになり、どれがどれだかわからなくなるということもありそうだ。

 

さらには、「アンチパーソナライズ派」のことも忘れてはならない。@cosmeに日々寄せられる書き込みの中には、「あなたはこれですと言われても、気持ちが満たされない」ユーザーもちらほら存在する。自分軸がきちんとある人にはパーソナライズが逆効果、つまりアンチパーソナライズ派である可能性がある。そういう人には、むしろどこで買うのがよいのかというガイドだったり、そのアイテムを選んだ行為自体を盛り上げるようなサービスがぴったりくるのかもしれない。〝変なホテル〟のカラオケのように、バーチャルカウンセリングミラーに多数の観客がいて、バーチャルで試したスキンケアやメイクをした自分をしっかりほめてくれる。それで気分をよくして、試したアイテムを大人買いするというのも悪くない。

 

 

BeautyTech.jp編集部
矢野貴久子
https://beautytech.jp/

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国際商業 2018年4月号より転載

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PROFILE

170810矢野

Kikuko Yano

BeautyTech.jp編集部 

雑誌編集、ネットメディア立ち上げを経て、プロデューサーとして、さまざまなネットメディアの編集、デジタルマーケティングに関わる。
Beauty Tech.jpは、サイト立ち上げ準備からプロデューサーとして陣頭指揮を執っている。9歳の息子との戦いごっこで体力づくりの毎日。

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