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【ビューティテック最前線】 第13回:世界に広がる「BeautyTech MeetUp」ネットワーク(国際商業3月号)

March 6,2019

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アイスタイルでは、ミッションである「ビューティ×ITで世界ナンバーワン」の実現を目指してグローバルに事業を展開しています。その中で、昨今世界の美容業界で盛り上がりを見せるBeautyTechの動向には以前から注目してまいりました。海外のグループ会社も増えてグローバルトレンド情報もいち早く入ってくるようになり、これらの情報を何らかの形で発信できないだろうか、そんな議論を積み重ね、@cosmeの編集ノウハウを活かす形で新たなメディアとして、今世界の美容業界で話題のBeautyTechを中心とした美容業界のイノベーショントレンドを配信する専門メディア「BeautyTech.jp」を立ち上げました。

そんな「BeautyTech.jp」の編集部は、「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「ビューティテック最前線」というタイトルで連載させていただいています。

国際商業とは
1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。
http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

今回は2019年2月7日発売、国際商業3月号に掲載されたものをご紹介します。

 

世界に広がる「BeautyTech MeetUp」ネットワーク

2017年4月、米国・サンフランシスコで、ビューティテックに特化した世界初のコミュニティ「@BeautyTech MeetUp SF」が立ち上がった。発起人は、女性投資家のオディール・ルジョル氏。同氏は、ロレアルの最高マーケティング責任者と、傘下のランコムでCEOを兼任し、現在はシリコンバレーで投資家として活躍する。ルジョル氏が現在注力するのが、「BeautyTech MeetUp」だ。美容スタートアップと投資家をマッチングし、お互い学び合ってビューティテックを盛り上げたいとするルジョル氏の思いは、世界各地のスタートアッパーたちにも伝わり、彼らが現地で支部を立ち上げるなど、そのネットワークは広がり続けている。

写真左が、発起人のオディール・ルジョル氏

投資家とスタートアップをつなぐBeautyTech MeetUp

BeautyTech MeetUpでは、イグジットに成功するなどの実績を積んだスタートアップが創業したての起業家にアドバイスを送ったり、登壇者同士で課題をシェアし合ったりと、その都度テーマに合わせたリアルで活発なディスカッションが行われる。また、その場で投資家や他の起業家と知り合うことも目的とされていることから、ディスカッション後には、必ずネットワーキングの場が設けられる。

 

同MeetUpの支部は、サンフランシスコを始め、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ロンドン、ベルリン、サンパウロ、上海、韓国、東京と世界各地に拡大を続けている。それぞれの運営は、現地のビューティテックスタートアップが行い、発起人のルジョル氏はアドバイザーとして各支部に助言するほか、実際にMeetUpに参加しパネルディスカッションに加わることもある。

 

東京支部は、2018年4月に立ち上がり、これまでに2回MeetUpを開催した。代表は、サンフランシスコを拠点に日本製コスメを販売するECサイト「Cosme Hunt 」の運営者である、女性起業家・高橋クロエ氏。高橋氏をサポートする形で、国内にある複数のビューティテックスタートアップや、筆者が所属するBeautyTech.jp編集部がボランティア兼メディアパートナーとして運営に関わっている。

AI、パーソナライゼーション。時代の先を行く美容スタートアップ

MeetUpに登壇する起業家の顔ぶれは多彩だが、傾向としてAI(人工知能)の活用やパーソナライゼーション、ユニークなプロダクトをベースとしたD2Cがグローバルトレンドとなっており、その軸でサービスを展開するスタートアップが多い。

 

たとえばニューヨークでは2018年9月、消費者一人ひとりに適したヘアケアアイテムを作る「Prose」の共同創業者兼CEOが登壇した。同サービスはユーザーがオンラインで髪質や頭皮の状態、ライフスタイル、環境(自宅の郵便番号を入力すると、その地域の紫外線量や湿度といった気象情報が自動的に抽出される)といった、いくつかの質問に答えるとその回答に基づき、独自のAIアルゴリズムで解析し、オーダーメイドのヘアケア品を提供するというものだ。76の自然派成分から最適な組み合わせを選び、工場から直接購入者の自宅に郵送する。

 

また、AIやパーソナライゼーションほど事例は多くないが、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用するサービスも増えつつある。

 

2018年10月に初めてロンドンで行われたMeetUpでは、VRネイルデザインが体験できるサロン「WAH LONDON」の運営スタートアップが登壇した。同サロンでは、ユーザーがVRヘッドセットを装着して自身の目の前に手をかざすと、さまざまな色やアートデザインが自分の爪の上にバーチャルに描かれるというサービスを提供。ユーザーは気に入ればネイルプリンター「WAH Nail Printer」を使い実際に爪にプリントするか、該当のネイルカラーを注文し自宅で受け取ることもできる。また、サロンに常駐するネイリストにデザインを転送し、施術を受けることも可能だ。
WAH LONDONのように、オンラインとオフラインを融合させていくことは、新しい消費者体験を創出するという意味で、世界的に注目されている。

 

ロレアルやランコムでブランドの強化と革新に携わったマリー・セブロン(Marie Cesbron)氏は、ロンドンで行われたMeetUpに登壇し、「デジタルネイティブのブランドが顧客を増やし成長し続けるには、オンラインを架け橋に、いかにして生活者とのタッチポイントをつくっていけるか」が鍵となると話した。

サロン業界の課題解決をと、立ち上がった日本の若き起業家たち

BeautyTech MeetUpは主に開催国や地域でビジネスを展開するスタートアップが登壇することから、各地の特色が出やすいのも特徴だ。

東京で行われたMeetUp第2回に登場したスタートアッパー3名は、さまざまな課題を抱える既存のヘアサロンビジネスに風穴を開けようと奮闘している。日本ではコンビニ以上に美容院があることで知られるが、当然それだけ各サロンは競争を強いられていることになる。既存サロンの多くは大手クーポンサイトを集客のベースにしているが、競合が増えるにつれて顧客獲得に苦戦。廃業も後を絶たない。こうした状況を変えようとするのが、自前のサロンを持たなくても営業できるよう、フリーランスの美容師に個室スペースを貸し出す「GO TODAY SHAiRE SALON」、好きなだけヘアケアサービスを受けられる定額制通い放題サービス「MEZON」を運営するJocy、費用や日時、スタイルなど条件を指定したいユーザーと、その希望に答える美容師をアプリ上でマッチングさせる「リクポ」といった、若きスタートアップたちだ。今後彼らがサロン業界にどんな明るい未来をもたらすか、投資家からも熱い視線が注がれている。

MeetUpを通じて、世界的にPay it forward文化が根づくか

MeetUpに登壇するのは基本的にスタートアップとあって、パネルディスカッションでは、資金調達が話題にのぼることも多い。

 

パリで初開催されたMeetUpに登壇したあるビューティテックスタートアップの創業者は、「大手企業は何百万ユーロの資金を短期間で集められるが、小さな企業は大変。年商100〜200万ユーロ以下の化粧品スタートアップであってもサポートを受けられる仕組みが必要だ」と訴えた。

 

こうした起業家の声に対し、フランスとシリコンバレー双方の投資状況に詳しい発起人のルジョル氏は、「それはシリコンバレーも同じだ」と明かす。「投資家は500万ドル以上の収益をあげる企業には興味を示すが、それ以下には厳しい。ただ、シリコンバレーの強みはコミュニケーションのアクセシビリティが高いこと」とする。

 

ルジョル氏によるとシリコンバレーのスタートアップ界隈では、誰かから受けた親切を別の誰かへの新しい親切でつないでいく「Pay it forward(ペイフォワード)」文化が根づいている。著名な投資家も含め、誰もが気軽にカフェで30分ほど話を聞くなど、助け合う風土があるのだ。「競合でも知らない人でもLinkedInでコンタクトすれば必ず会ってくれる」といい、日常的に色々な分野の人やメンターと会いやすい環境だ。そうした場で悩みを打ち明け、解決策を模索しながらビジネスモデルを磨き上げていくという。

 

ビューティテックスタートアップにとって、いままで個人ベースのつながりはあっても、志を同じくする者同士が集まってオープンに語り合える場は決して多いとはいえなかった。しかしMeetUpネットワークが成長するにつれ、こうした文化が広がり、各地で根づいていくかもしれない。そんな思いがあるからこそ、ルジョル氏もMeetUpを立ち上げたはずだ。

 

ルジョル氏は、今後もビューティテックに関わるスタートアップ、投資家双方の発展と、なにより消費者が利益を享受できるビジネスが生まれ続けることを願い、精力的に活動していくことだろう。

 

BeautyTech.jp編集部
副編集長 公文紫都
https://beautytech.jp/

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国際商業 2019年3月号より転載

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PROFILE

公文さん

BeautyTech.jp編集部 副編集長

東京都生まれ。青山学院大学文学部卒業後、IT関連企業、新聞社勤務を経て、2012年6月に独立。以来、国内外の IT、EC業界を中心に、幅広い分野で取材・執筆を行う。2014年5月にニューヨークに生活拠点を移し、2018年1月に本帰国。現在はBeautyTech.jp編集部に在籍。

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