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【ビューティテック最前線】第16回:米アマゾンが仕掛ける 化粧品PBが示すもの(国際商業6月号)

May 21,2019

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アイスタイルでは、ミッションである「ビューティ×ITで世界ナンバーワン」の実現を目指してグローバルに事業を展開しています。その中で、昨今世界の美容業界で盛り上がりを見せるBeautyTechの動向には以前から注目してまいりました。海外のグループ会社も増えてグローバルトレンド情報もいち早く入ってくるようになり、これらの情報を何らかの形で発信できないだろうか、そんな議論を積み重ね、@cosmeの編集ノウハウを活かす形で新たなメディアとして、今世界の美容業界で話題のBeautyTechを中心とした美容業界のイノベーショントレンドを配信する専門メディア「BeautyTech.jp」を立ち上げました。

そんな「BeautyTech.jp」の編集部は、「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「ビューティテック最前線」というタイトルで連載させていただいています。

国際商業とは
1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。
http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

今回は2019年5月1日発売、国際商業6月号に掲載されたものをご紹介します。

 

米アマゾンは、2019年3月に、自社開発のプライベート・スキンケアブランド「Belei」を発表した。
決して奇抜ではないが、どこをとっても、いま支持されるスキンケアのいいところどりをしているかのようだ。落ち着いた信頼感のあるパッケージは、ポンプ式で清潔さが保たれるようになっており、リサイクル可能な素材からつくられている。消費者から厳しい目を向けられることの多い成分である硫酸系化合物やパラベン、フタル酸エステルは不使用で、動物実験はしない。最近の多くのスキンケアスタートアップが目指す「エシカル」をコンセプトに取り入れており、保湿クリーム、セラム、パック、サンスクリーンなど12種類、価格は9〜40㌦程度と、プチプラから中価格帯の手が届きやすい価格だ。

オンライン化粧品市場でアマゾンのシェアは21%

事実、その圧倒的な利便性は消費者から歓迎されており、コンサルティング会社ATカーニーの16年の調査では、オンラインで化粧品を購入する人の69%が、最初に商品検索をするサイトはアマゾンであると答えているという。化粧品専門店であるセフォラは41%、ウルタが37%という回答からも、化粧品を購入する際にアマゾンが第一の選択肢として深く浸透していることがわかる。

アマゾンにおける実際の化粧品「売り場」についても、日本では「ラグジュアリービューティ」と「ビューティ」の2カテゴリーに分かれており、ラグジュアリーブランドが出店しやすい雰囲気づくりにも積極的だ。米国ではさらに18年6月に「インディービューティ(Indie Beauty)」というカテゴリを設け、気鋭の独立系ブランドを扱っている。まさにセフォラやウルタと真っ向勝負するかのようなコーナーだ。

そのインディービューティへの出店条件はかなり厳しいといわれ、オーナーが50%以上の株式を持っていることや、ウルタやターゲット、ウォルマートで販売していないということが条件だという。新興ブランドやスタートアップにとっては、どの販売パートナーと組むかという選択肢が広がったことになる。短期で知名度をあげ、売り上げをとるならアマゾン。ブランドをきちんと伝えファンづくりに注力するなら自社ECや、化粧品に特化したストアと組むというような流れができつつある。もともとセフォラやウルタは、目をつけた新興ブランドを限定商品や共同開発パッケージなどで手厚く育ててきたが、それと同じように、アマゾンもいち早く優秀な新興ブランドを囲い込もうという施策だ。

アマゾンは美容業界のディスラプターとなるのか

こうして、アマゾンがラグジュアリーからインディーブランドまでのトレンドデータを集め、ビジネス含め美容業界のディスラプターになるのかという問いに対しては、答えはノーだという見方も多い。それは、化粧品購入が、利便性から「体験」へとシフトしつつあるからだ。モノからコト消費と言われて久しいが、化粧品についてはリアル店舗を持たないアマゾンは現段階では後塵を拝するかたちになる。

前述のセフォラやウルタは、店内で自由に試せるコーナーやメイクアップサービスを充実させているほか、ARによるヴァーチャルメイクやスマートミラー、AIによる肌分析など店内での体験がテクノロジーによって進化しつつあり、店頭では楽しんでもらい、アプリをダウンロードすれば購入はリアルでもオンラインでもというオムニチャネルに重きをおいている。

ウルタは18年のフォーチュン500にも選出されるほどの快進撃で出店攻勢を緩めることなく続けることを明言しており、サイト上には多くのレビューが集まりアマゾンにも劣らない化粧品のクチコミサイトとしても成長している。セフォラも売上高は公表されていないものの、9%程度の堅調な伸びを維持しているといわれる。

アマゾン・ゴーのビューティ版が誕生したら

今後、消費者のほうでは「使い分け」がますます進んでいくはずだ。アマゾンは「早く見つけたい」や「早く届けてほしい」ときに使い、セフォラやウルタといった専門店では「楽しい」「私のことをわかってくれる」体験とともに化粧品を購入する。

ただ、アマゾンがプライベートブランドの完成度をさらにあげてくる可能性はある。データはあくまで過去のものであり、そこから半歩先のトレンドや、強力なブランドポリシーを導き出すのは、人の力である。

アマゾンのデータを駆使して、強いポリシーのある化粧品スタートアップや、セレブ、あるいはインフルエンサーとタッグを組んだとしたら、大きな影響力を持つブランドが誕生する可能性はあるだろう。そういった強力なPB商品をそろえ、既存ブランドも含め、多様な体験ができるアマゾン・ゴーのビューティ版が誕生したとすれば、そのとき彼らは大きな脅威となる。「BELEI」の誕生は、その序章にすぎないのかもしれない。

 

BeautyTech.jp編集部
編集長・矢野貴久子
https://beautytech.jp/

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国際商業 2019年6月号より転載

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PROFILE

170810矢野

Kikuko Yano

BeautyTech.jp編集部 編集長

『FIGARO Japon』など雑誌編集を経て1999年に働く女性のためのメディアcafeglobe.comを立ち上げる。
2012年より株式会社メディアジーンにて女性メディア統括、株式会社インフォバーンなどでメディアプロデューサーとして企業のオウンドメディア支援、メディアビジネスコンサルティングに携わる。その他さまざまな企業のブランディングやクリエイティブ、メディアコンサルタントとして活動。
2016年3月までデジタルハリウッド大学院客員教授としてWeb事例研究などの講義を担当。

2017年7月よりアイスタイルにてBeautyTech.jp立ち上げ準備に関わり、2018年2月に編集長就任。

好きな時間はダンスをする&見る、旅をする、人と会う、ヨガ&ピラティス、さまざまなものから新しい考えに触れられたとき。

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