【@cosmeから見た”生活者”のいま】テーマ:高まる「頭皮ケア」ニーズ(国際商業10月号)
September 8,2017
アイスタイルには、「日本最大のコスメ・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)」の膨大なデータ群を分析し、マーケティングに活用する通称「リサーチチーム」と呼ばれる部隊がいます。
1300万件を超える膨大なクチコミはもちろん、アクセスデータや意識調査やインタビューを通して、消費者に触れ続けているリサーチチーム。そんな彼らの気づきや仮説、興味を「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「@cosmeから見た”生活者”のいま」というタイトルで連載させていただいております。
国際商業とは・・・
1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。
2017年9月7日発売、国際商業10月号に掲載されたものをご紹介します。
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高まる「頭皮ケア」ニーズ
アットコスメには化粧品を中心に、約29万件の美容関連商品情報が登録されている(2017年8月時点)。この1年間だけに限定しても約2万商品が新規に登録されており、いかに多くの商品が日々発売されているかを改めて実感させられる。また、新しく登録された商品をアイテム単位で集計することによって、消費者のニーズの変化を垣間見ることができる。例えばここ数年のメイクトレンドとして、「アイメイク」から「リップメイク」へのシフトが見られているが、新規商品登録状況からも「マスカラ」が減少し「口紅」が増加するといった同様の傾向が表れている。
「口紅」と同様に増加傾向が見られたアイテムとして「アイブロウ」「美容家電」「ブースター・導入液」「マニキュア」などが上位に挙げられるが、今回は「頭皮ケア」(11年に比べ1・5倍)に着目し、クチコミの変化などから窺える消費者ニーズを紹介したい。
「頭皮ケア」が以前より注目されるようになった要因として、高齢化による中高年層の増加や、女性の社会進出が進みストレスを抱える女性が増加したなどといった社会状況の変化がひとつ挙げられるだろう。
さらに、スキンケアでは土台から整えるという発想に基づいた商品が多く発売されたり、インナーケアへの関心が高まるなど「根本から改善する」という考えが浸透しつつあること、また予防歯科や予防美容といったワードを耳にする機会も増え、トラブルが起きる前にケアするといった意識が高まっているように感じている。こうした流れから考えても、「頭皮ケア」への注目の高まりはごく自然なことと言えるのかもしれない。
アットコスメの「頭皮ケア」カテゴリに登録されている商品は、「シャンプー」「ブラシ」「アウトバストリートメント」「育毛剤」など多岐にわたっているが、どのようなクチコミが投稿されているのだろうか。
あるシャンプーのクチコミを例に見てみると、「頭皮の臭い、痒みに悩んでいて、こちらを購入しました。頭皮の臭いも抑えられました。」といった悩みの解消を目的として使用している人と、「トリートメント後でも軽く残るスースー感が気持ちよく、気分的にもさっぱりして私は好きです。」と使用感の好みなど悩み以外の目的で商品を選択している人に二分される。
今回は目的を明確にするためにクチコミの中に「頭皮」「地肌」「スカルプ」いずれかのワードを含むものを対象とし、以下の分析を行った。
過去10年間に「頭皮ケアカテゴリ」に投稿されたクチコミのうち前述の3ワードを含む比率を時系列で比較したところ、10年前は3割程度だったのに対し、直近では6割近くまで増加している。つまり、以前より「頭皮ケア」を目的として商品を使用している人たちが増加しているものと推測される。こうした割合の推移や、クチコミの内容、投稿者の属性などから大きく三つの時期に分けて、特徴を見ていきたい。
■08年度〜10年度
平均年齢29歳。「10代・20代」のクチコミが51%を占める(40歳以上は9%)。特徴的なキーワードとして「爽快感」「かゆみ」「匂い」「メントール」が挙げられる。投稿のタイミングとして夏場が多く、主に若年層が頭皮の汚れや脂をすっきり落とすことを目的に使用するクチコミが多く見られる。どちらかというと男性用頭皮ケアシャンプーに近しい印象を受ける。
■11年度〜14年度
平均年齢32歳。「10代・20代」のクチコミが41%を占める(40歳以上は18%)。特徴的なキーワードとして「血行」「ブラシ」「オイル」が挙げられる。ブラシを使ったマッサージや、シャンプー前にオイルを地肌に塗布するといったケア方法が取り入られており、汚れを落とすことに加えて、血行を良くするために商品を使用するクチコミが特徴的に見られている。
■15年度〜17年度
平均年齢35歳。「10代・20代」のクチコミは28%まで減少(40歳以上は31%)。特徴的なキーワードとして「ハリ」「コシ」「白髪」「健やか」が挙げられる。年齢も上がり、エイジングケアを目的とした使用クチコミが増加。投稿時期は、夏場に偏ることなく、1年を通し比較的均等にされている。また「リラックス」「リフレッシュ」「香り」というキーワードも特徴的に使用されており、好きな香りに癒されながらマッサージをするクチコミが増えてきている。
以上に見る通り、この10年間で「頭皮ケア」を目的とした使用者の属性やニーズは変化しており、現在はよりエイジングケアや予防ケアを目的としたクチコミが増加していることがわかった。この傾向は、冒頭に記述した社会状況の変化に伴い今後ますます強まっていくことが予想される。
こうした流れにおいて心配な要素を挙げるとしたら、エイジングケアを目的とした使用の場合、即効性を実感しにくいといった点なのではないだろうか。元々「頭皮」「地肌」「スカルプ」といったワードを含むクチコミと含まないクチコミを比較すると、ワードを含むクチコミでの商品リピート率は3㌽低い。より効果感が期待できる商品へとスイッチしてしまう人が多いのかもしれない。
直近のグループでキーワードとして挙げられていた「自分の好みの香り」がするものや、最近多く発売されているボディやフェイスにも使えるマルチパーパスな商品、シャンプーからトリートメントまでワンステップで済む時短商品など、たとえ即効性を感じられなかったとしても使い続けることにメリットや楽しさを感じられる商品が今後より求められていくのではないだろうか。
アイスタイルリサーチプランナー 原田彩子
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国際商業 2017年10月号より転載