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【@cosmeから見た”生活者”のいま】テーマ:「日用品」におけるクチコミの価値(国際商業6月号)

May 9,2017

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アイスタイルには、「日本最大のコスメ・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)」の膨大なデータ群を分析し、マーケティングに活用する通称「リサーチチーム」と呼ばれる部隊がいます。

 

1300万件を超える膨大なクチコミはもちろん、アクセスデータや意識調査やインタビューを通して、消費者に触れ続けているリサーチチーム。そんな彼らの気づきや仮説、興味を「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「@cosmeから見た”生活者”のいま」というタイトルで連載させていただいております。

国際商業とは・・・

1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。

http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

2017年5月7日発売、国際商業6月号に掲載されたものをご紹介します。

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「日用品」におけるクチコミの価値

 

各メーカーとも日用品の売上げが堅調だという。特によく目にするのが付加価値を持った比較的高価格帯商品の受容度が高まっているというニュースだ。

 

日用品を購入する際に重視する点として、主に「価格」と商品のパッケージや店頭の広告・POPなど「店頭での情報」が挙げられるだろう。以前アットコスメメンバーに対し実施したインターネット調査の結果を見ても「日用品」を購入する前にクチコミを参考にするという比率は約4割にとどまり、事前にクチコミを参考にしてから購入に至るという人は決して多いとは言えない様だ(図1)。

 

日用品は、生活には欠かせないものでありながらも、どの商品を購入しても大きな違いを感じられないため積極的に情報収集を行わないといったところだろうか。しかし、付加価値を持った高価格帯の商品が支持されるいま、購入までのプロセスにも変化が生じるのではないだろうか。

 

化粧品の事例となるが、アットコスメで1人当たりが平均何ページのクチコミを閲覧しているのかを調べたところ、価格帯が高い商品でより閲覧ページ数が増える傾向が見られた(表1)。高い商品を買う際は、失敗したくないという心理が強く働くため、より多くのクチコミに目を通すことで失敗するリスクを軽減させているのではないかと考えている。この心理は決して化粧品特有のものではなく、日用品も同じなのではないだろうか。

アットコスメは昨年6月に新しく「日用品」「保健機能食品」「ハーブ・アロマ」「シェイプアップ」「ファッション」「医薬品」「医療機器」の7カテゴリーを追加した。カテゴリー新設から約1年が経過しようとしているが、商品登録数・クチコミ数ともに徐々に伸長しており生活者のリアルな声を目にすることができる。

 

新カテゴリーに対して寄せられるクチコミのなかには、化粧品好きのアットコスメメンバーならではの視点で書かれているものも少なくない。例えば、「洗濯洗剤」では襟についたファンデーションの落ち具合について、「エアフレッシュナー」ではお気に入りの香水と比較した感想が、保健機能食品では「化粧品と比べてどちらがコスパがよいか」など価格や機能評価に寄りがちな日用品においても、また違った視点で商品選択をすることの楽しさや、新たな価値基準を教えてくれる可能性があるのではないかと感じている。

 

もう1点、日用品のクチコミが今後重視される可能性を感じさせる点として、晩婚化や未婚女性の増加に伴い、働く女性が増えたこと、日用品の購入者が専業主婦以外にも広がりを見せていることが挙げられる。

 

有職者は(職場や職種にもよるが)人と接する機会が専業主婦と比べると多いであろうことが想定される。人と会う機会が多いと、必然的に他人からどのように感じられているのかを気にする機会も増えるだろう。つまり何か商品を選択する際の判断軸に、自分や家族の好みだけでなく、これを使うことで職場や取引先、通勤電車に居合わせた人たちがどのように感じるのか、という他者視点が加わると考えられる。

もちろんあくまでも有職者でよりその傾向が高いであろうという話であり、専業主婦でもママ友の輪から浮かないように留意したり、夫の職場での評価を気にするなど他人視点での商品選びをする場面があろう点は、誤解のないよう付け加えさせていただく。

 

他者がどのように感じているのかを知りたいときに役立つのが、他者の使用感想が書かれているクチコミである。例えば、近年使用率が上がっている香りつき柔軟剤の購入を検討するとき、自分がいい香りだと思っていた商品に対して否定的なクチコミを目にすれば、職場に着ていくものへの使用は避け、寝具など家で使うものの使用に留めておこうといった気づきとなるだろう。また実際に「職場の後輩に、私と同じ柔軟剤マニアの子がいるのですが、『これは何の柔軟剤?けっこう香るね!』と言われてしまいました。香害にはならないように気をつけながら使用したいと思います。」といったクチコミからは、よりリアルにその場面を思い浮かべることができる。

 

アイスタイルは毎年12月にその年に支持された化粧品を「アットコスメベストコスメアワード」という形で発表しているが昨年末は化粧品とともに一部日用品も顔を並べた。そのなかで、「ベスト柔軟剤」第1位に選ばれた「花王/フレアフレグランスIROKAエアリー」、「ベストエアフレッシュナー」第1位の「小林製薬/1滴消臭元」のクチコミ投稿者の職業を調べてみると、ともに「有職者」が7割を超えており、その比率は化粧品を上回る高さであった。

 

分析前はおそらく「専業主婦」からの投稿が多いであろうことを想定していたため個人的にはまず意外な結果と感じた。ではなぜ、日用品のクチコミは「有職者」から多く投稿されているのか。想定される理由のひとつとして専業主婦はリアルなコミュニティを持っていることが影響しているからではないかと考えている。専業主婦は、普段の会話の中でも家事や育児に関する話題が比較的多く「子供のシャツの泥汚れを落とすのにはあの洗剤がいい」「駅前のドラッグストアで柔軟剤の新商品の試供品を配っていた」といったような話題も出やすいのではないだろうか。一方で有職者は職場でそうした話題がでることは少なく情報を発信する機会はあまりないのではないだろうか。もちろん情報を収集する意味においても同様である。

 

このように高価格帯の商品が支持されていることや、女性のライフスタイルの変化に伴って今後日用品の選び方や参考とされる情報が変化していくのではないかという兆しを感じている。まずは冒頭で紹介した、「日用品」を購入する前にクチコミを参考とする比率が半数を超える日がくるか。今後の変化を楽しみにしたい。

 

アイスタイルリサーチプランナー 原田彩子

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国際商業 2017年6月号より転載

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