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【@cosmeから見た”生活者”のいま】テーマ:進むパーソナライズ化(国際商業4月号)

March 8,2017

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みなさんこんにちは。

広報室の野田です。

 

アイスタイルが運営する「日本最大のコスメ・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)」には様々なデータが存在します。2017年3月1日時点でのクチコミ総件数は、なんと「13,188,555件」!その他にも3万を超えるブランド情報や、約27万件の商品情報が登録されており、@cosmeのメンバー数は390万人です。

 

アイスタイルの中には、そんな膨大なデータ群を分析し、マーケティングに活用する通称「リサーチチーム」と呼ばれる部隊がいます。データに基づく鋭いインサイト分析は社内外から大きな信頼を集めており、毎月「月刊 国際商業」の中で「@cosmeから見た”生活者”のいま」という原稿を掲載しております。

国際商業とは・・・

1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。

 

http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

今月から、国際商業の中で掲載されている記事をSTORiES -istyle blog-の中でもご紹介させていただくことになりました。

 

第一回は3月6日発売の国際商業4月号に掲載されたものをご紹介します。

 

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進むパーソナライズ化

新商品が多く発売される3月、アットコスメにも多くの商品情報が寄せられている。すでに発売されている商品も含めると現在アットコスメに登録されている商品数は約27万商品に及ぶ。これほど多くの商品の中から、消費者はいったいどういった基準で化粧品を選択しているのだろうか。
以前、アットコスメメンバーに対して、「普段どのようなイメージのスキンケア化粧品を選んでいるのか」を聴取したところ「効果がありそうな」「自分に合いそうな」がそれぞれ7割強で並んだ。2項目の比率を時系列推移(2013〜15年)で比較すると、「効果がありそうな」が3年連続で微減しているのに対し、「自分に合いそうな」は3年連続で増加傾向と相反する動きを見せている(図1)。

 

16年は同一項目での調査は実施していないが、クチコミや他のデータなどからこの傾向は継続していると考えている。また、メイクアップカテゴリにおいても口紅のパッケージに自分の名前を刻印できるサービスが人気となったり、香り
や使用感の心地よさ、商品を所有することで得られる満足感を記述するクチコミが増加するなど、商品の選択軸に仕上がりだけではなく、いかに自分向けの商品であるかという視点が加味されている風潮が窺える。
また、近年注目を集めている商品として「20代向け」「50代向け」など年齢訴求のものや「敏感肌」「乾燥肌」向けといった肌質を謳った商品が増えている印象を受ける。この「年代」と「肌質」という二つの要素は、クチコミを見る際に参考にするポイントとしても上位に挙げられており、いかに「自分に合った」「自分向け」の商品であるかを感じてもらうためには有効なコミュニケーションと言えそうである。

 

昨年12月に発表された「アットコスメベストコスメアワード2016」の総合大賞は、99色の色展開の中から「自分向け」の1品を見つけられると話題の「アディクション ザ アイシャドウ」が受賞。次いで、総合2位には28色の「イ
ヴ・サンローラン・ボーテ ルージュヴォリュプテシャイン」が選ばれるなどカラーバリエーションが豊富な商品が多くランクインしており、前述の消費者ニーズが反映された結果と考えられる。

 

その一方で、行動経済学などでは「人は選択肢が多くなると決めることができずに、物を買うことをあきらめてしまう」とも言われている。このことを証明した研究として有名な「ジャムの実験」(米コロンビア大学ビジネススクールシーナ・アイエンガー教授)と呼ばれる事例をひとつ紹介したい。

 

サンフランシスコのあるスーパーの入り口近くに、ジャムの売り場を設けた。ひとつは24種類の試食ができる売り場、もう一つは6種類に絞った売り場である。24種類を揃えた売り場の場合、通行する来店者の60%が立ち止まった。一方6種類の売り場の場合は、40%にとどまった。しかし、実際に購入に至った比率を比較すると24種類の売り場が3%の購入率だったのに対して、6種類の場合は30%が実際にジャムを購入したという。つまり、選択肢の多さは消費
者の興味喚起には寄与するものの、必ずしも購入に結びつくとは限らないといった事例である。
話を化粧品に戻すと、「自分向け」の商品を求める消費者ニーズを叶えることのできる豊富な色展開は、一方で種類が多すぎて選べないという心理が働きかねないため、選択に迷わないためのメーカー側の情報発信やサービス強化が
非常に重要な鍵を握りそうだ。例えば先ほど挙げた2商品で言えば「美容部員」の存在があげられる。

 

直近1年間にアットコスメに寄せられた「アディクション ザ アイシャドウ」および「イヴ・サンローラン・ボーテ ルージュ ヴォリュプテシャイン」のクチコミの中で、「美容部員」もしくは「BA」の単語が含まれるものは1割前後であった。またその平均評価点は2商品ともに全体と比較すると0・3点高く、美容部員の推奨が評価に影響を及ぼしている可能性が高い(図2)。


しかしながらチャネルが多様化する昨今、百貨店の化粧品であっても「セルフで購入できる化粧品専門店」が登場したり、「通販」での購入も増加しており「美容部員」の接客を介することなく購入する率が増えつつある。また、そもそもセルフ派の人たちにとっては「美容部員」とのコミュニケーションが逆にストレスとなり兼ねない。だが、セルフ派であっても「選べない」「誰かに相談したい」と思う気持ちは同じではないだろうか。

 

そうした中で今後期待されるのが、AI(人工知能)や機械学習技術の進化に伴う商品レコメンドの機能の向上や遺伝子解析などからその人にあった商品を提供してくれるといったサービスだ。

 

17年1月には資生堂が米国のベンチャー企業「MATCHCo(マッチコー)」の買収を発表した。マッチコーは特許技術をもとに、スマートフォンのアプリを使ってユーザーの肌色を計測し、それにマッチしたカスタムメイドのファンデーションを提供するビジネスを展開しており、今回の買収により化粧品のパーソナライゼーションというビジネスモデルを強化するという。また、カネボウ化粧品は、16年12月に、システム開発パートナー・株式会社NTTドコモとスマートフォン用アプリを開発。店頭で受けとることのできる「肌水分センサー」をスマートフォンに接続すると、自分の肌水分がいつでもどこでも測定でき、さらにその測定結果をアプリ内に記録できるサービスを展開している。

 

今後は、こうしたサービスの発展を背景に、より多くの人が自分のライフスタイルや嗜好に合った形で、「自分向け」の1品の提案を受けられるようになるのではないだろうか。アットコスメも、2020年に向けてAIを導入したレコメンド機能の向上を目指し開発を行っており、生活者の商品選びの助けになれればうれしく思う。★

 

アイスタイル リサーチプランナー 原田彩子

 

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国際商業 2017年4月号より転載

 

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