【リサーチコラム】 本当にくるのか メンズコスメ?!
March 26,2020
アイスタイルには、「日本最大のコスメ・美容の総合サイト@cosme(アットコスメ)」の膨大なデータ群を分析し、マーケティングに活用する「リサーチチーム」があります。1500万件を超える膨大なクチコミはもちろん、アクセスデータや意識調査やインタビューを通して、消費者に触れ続けているリサーチチーム。そんな彼らの知見をご紹介します。
今回のテーマは、「メンズコスメ」です
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2019年は美容男子元年
2018年から19年にかけ、化粧品業界初の総合メンズコスメブランド「FIVEISM x THREE」が登場したり、シャネルやトムフォード、ジバンシィなどから男性(またはユニセックス)のためのメイクアップ製品が続々と発売されました。アットコスメでは、2019年を日常的に「美容」に気を配る男性「美容男子」が増加し、一般的に浸透しつつある「美容男子元年」と位置付け、2019年のビューティ界を大いに賑わせた「トレンドキーワード」のひとつに選出しました。
メンズコスメティックス市場は伸長
株式会社富士経済「化粧品マーケティング要覧 2019」によると、2019年のメンズコスメティックス市場規模は2018年比1.4%増の1,196億円見込み。男性のケア意識の高まりを背景に拡大しているとのことです。しかしアットコスメの男性の会員登録数、アクセス、クチコミ投稿に大きな変化は見られませんでした。残念ながら、利用者の多くが女性のアットコスメのデータからは、男性の動きは見えてこないようです。でも、女性についてだったら?
メンズコスメの波が女性たちに何らかの影響を及ぼしているのではないか。今後メンズコスメがさらに伸長するかどうかは、女性たちがそれを受容するかが重要になってくるのではないか。今後のメンズコスメの可能性をうらなう1つの材料として、女性からみたメンズコスメについて考えてみました。
アットコスメメンバーの約9割が 男性のスキンケアを受容
まず2019年5月に実施した意識調査の結果をご紹介しましょう。20~69歳の女性アットコスメメンバー5,723人に対し、男性がスキンケアをすることについての気持ちを聴取したところ、約9割が「とてもいいと思う」または「まあいいと思う」と回答しました。また「身近にスキンケアをする男性が増えたと思うか」という質問に対し、約7割が「とてもそう思う/ややそう思う」と回答しています。
ほとんどの女性アットコスメメンバーが男性のスキンケアを受容しており、約7割が自分の身近な男性、例えば旦那さんや彼氏、友達などがスキンケアしている姿を想像できる状態にあるようです。
男性がメイクアップすることへの受容は、スキンケアの半分程度
ただし男性のメイクアップとなると少し話は変わってきます。「男性がメイクアップをすることをいいと思う」と回答した人、「身近にメイクアップをする男性が増えたと思う」と回答した人は共に4割前後。スキンケアに比べると、その受容は半分程度に落ちてしまいます。スキンケアに比べると、メンズメイクアップの大衆化はまだ難しいかもしれません。
しかし10年後、20年後はわかりません。上記の質問への回答を年代別に見てみると、男性のメイクアップへの受容は年代が低いほど高く、20代に至っては「身近にメイクアップをする男性が増えたと思う」への回答が半数に迫っています。
しかも20代は他年代に比べカメラアプリの利用率が高く、フィルターや修正機能を通してメイクアップ効果を実感する機会も多い年代です。クマやシミがなくなったらどんな顔になるのか、肌がトーンアップされるとどのように見えるのか、男性でもメイクアップの力をアプリを通して確認することができるのです。そのような環境にいる彼らが、メイクアップに関心を持つようになることは想像に難くありません。
女性のクチコミに変化?「夫」「息子」の出現が増加
メンズコスメの浸透は、女性の化粧品選びにも影響を与えているかもしれません。アットコスメに投稿されるクチコミに使われている言葉の変化を調べてみると、「夫」や「息子」という言葉の出現件数が増加しています。
例えばこのようなクチコミがあります。
SNSで、ニキビ跡に良いとこちらの商品を絶賛している方がいて気になって購入しました。ニキビが増えてくのでやっぱりダメか?と思い使わず放置。捨てるのは勿体無いので夫に使ってもらっていたところ2週間程たった時夫の顔のくすみが取れて明るくなった(白くなった?)ように感じました
長らく不景気が続く日本の消費者は、モノを購入して得ることができるメリットよりもリスクに重きを置くようになり、「無駄にしたくない」という気持ちが強まっていると考えています。充分に検討して購入した製品であっても「もしも自分に合わずに無駄になってしまったら」という不安は、実際に使ってみるまで払拭されることはなく、消費を妨げる大きな壁となっています。このクチコミのように、「もしも自分に合わなかったときに、代わりに誰かに使ってもらうことで、自身の消費行動を肯定したい」という行動は当たり前になっていくかもしれません。
息子用のボディソープ、私用のボディソープ、夫用と3つある我が家。夫と息子を一緒にしたいのだけど、なにぶんベビー用ソープは結構お高め。夫のソープ使用量は多いので、息子との併用が難しい状況。という感じで2年半そんな状況が続いていました。今までベビーソープを購入していましたが、これに変えようと早速詰替え用を購入しました。
また、長引く不景気はモノを持たないことを良しとする価値観も生み出しました。無駄なモノを断捨離し、ミニマムでシンプルなライフスタイルを美しいとする風潮のなか、バスルームに何本ものシャンプーがある状態というのはストレスに感じられるようになると思われます。このクチコミのように「モノを減らす」ことを目的とするモノ選びは、今後増えていくのではないでしょうか。
ここまでご紹介したクチコミは女性に選択権があるものでしたが、メンズコスメの増加に伴い以下のようなクチコミも見られるようになりました。
私の彼氏がニキビやクレーターなどで肌の悩みが尽きない方でお休みなどのデートやお出掛けの際にこちらのファンデーションを愛用していたのですが、あまりにも肌質が綺麗に見えるのでそんなに良いのかなと疑問になり試しに借りてみた商品です!!実際使ってみて感じましたが女性物のファンデよりもノリが良くて付け心地がサラッとしているのでナチュラルな感じに仕上げてくれるのに毛穴なんかをとても綺麗にカバーしてくれるんですよね♪正直最初はメンズ物ってちょっと抵抗あったのですが、今では私も自分用に購入して愛用しているほど使いやすいアイテムです!! #ウォーターファンデ #女性用より使いやすい #潤い #ノンオイリー
シェアすることを前提に
「異性が使用したときに違和感がないこと」
「一緒に使う異性にも満足してもらえること」
がこれからの化粧品の選択重視点に?
まだまだ件数は少ないですが、「シェア」「男女兼用」という言葉がクチコミで使われる頻度も増加しています。
お値段以上、夫とシェアコスメとして使っています
私は流行りの「濡れ髪」をしたくて、旦那は髪を盛るのためにでしたがお互いに目的達成です!
今後、男性の美容への関心がもっと高まっていくと、女性の化粧品選びは男性とのシェアを前提としたものになるかもしれません。そうなったとき、例えばシンプルなパッケージであったり、べたつかない使用感といった異性が違和感なく気持ちよく使えそうなこと、そして異なるニーズを同時に満たすことができることが化粧品により求められるようになるのではないでしょうか。
メンズコスメは本当に来る。そしてその波は、男性だけでなく女性の化粧品の選び方をも変えるのではないか。そう思っています。