「苦しいけれど、楽しい!」
-リアルな課題に取り組むことで見えてくるもの
【インターンシップレポート_後編】
December 1,2015
※本記事は2015年12月1日にアイスタイル HR blogに投稿された記事の再掲です。
2015年夏、アイスタイルでは、新潟県越後妻有で開催されている大規模アートイベント「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」とコラボレーションしたサマーインターンシッププログラムを実施いたしました。テーマは「大地の芸術祭を未来につなげる収益モデルを創出せよ」。前回の記事では、アイスタイルがなぜこのテーマに取り組んだのか、その思いについてお伝えしました(→前編はこちら)。今回は、実際のプログラム内容についてレポートいたします!
現地に足を運び、現場を肌で感じる
今回も引き続き、本インターンシップのプロジェクトマネージャーである田中さんにお話をお伺いします。
- 具体的にはどのようなプログラム内容だったのでしょうか。
田中: はい。まずは現地での3日間のフィールドワーク、その後東京のオフィスに戻って3日間のグループワークを行いました。この6日間は毎日1回、アイスタイル代表の吉松がメンタリングを行う時間を設け、学生のアイディアやプランについてのレビューをします。学生はそこで得たフィードバックやアドバイスをもとに、プランをつくっていくというやり方です。その後、半月ほどかけてさらにプランをブラッシュアップ。途中一回、再度吉松による中間レビューをはさみ、最終プレゼンテーションとなります。
現地でのフィールドワークでは、来場者の立場で作品を見てまわることに加えて、運営事務局の方や地域の方々にお話をお聞きしました。具体的には、空き家となった古民家や廃校を使った施設の管理をボランティアとして行っている地元の方々にお話を伺ったり、行政サイドからの視点も得るため市の職員からもヒアリングをしたりしました。
また、現地の農家の方のご協力により農業体験もさせていただき、現地の生活や課題についての理解をさらに深めました。
- フィールドワークを通して、学生の皆さんは何を得たのでしょうか?
田中: まず、自分たちの足で歩いてみたことによって、来場者の視点で課題をピックアップできたと思います。例えば、施設同士の物理的な距離を補うだけの交通インフラが整っていないことや、おみやげコーナーでの陳列や商品戦略がバラバラであることなどです。そこにビジネスチャンスを見出した参加者もいました。
また、関係者へのヒアリングでは、作品のことや芸術祭の運営のことだけではなく、特に現地の方々に対しては日々どんな暮らしをしているのか、この地域に住み続ける理由は何か、などといった生の声を集めるヒアリングを重ね、どんな課題があるのか、それを解決するためのフックになるようなことはないかを見つけようとしていました。
3日間の日程のなかで、毎晩2時間程度グループでディスカッションをする時間を設けていました。私たちはあまり学生たちのディスカッションには介入せず、彼らが自分たちの肌で感じて自分たちで考えるという時間を多くとるようにしていました。あまりフォローしすぎると、彼らが自分で考えなくなってしまうと思ったからです。どちらかというと、私たちというより現地の方々にメンター役になっていただくというスタンスを大切にしていました。学生たちもそれを理解していたようで、現地の方々のお話から得られるものをすべて得ようと、毎回「ここではしっかりこれを聞こう」と確認し合っていました。
「思い」は必要。でもそれだけではダメ。
- そして、最終日のプレゼンテーションに向けて、グループワークですね。
田中: はい。オフィスに戻ってからは各チームでひたすらビジネスプランを練りました。初日はアイディアの羅列が多かったのですが、吉松からのフィードバックをうけて、徐々にリアリティのある数字を作れるようになってきたように思います。どのチームも、アイディアや視点としてはおもしろく、きちんと分析や検証をすればビジネスとしての可能性を感じられるものばかりでした。
フォローする側として私たちが気をつけていたこととしては、「思い」の部分と冷静な分析とのバランスです。実際に自分たちの目で過疎地の現状を目の当たりにすると、使命感のようなものが芽生えてきて、感情的になってしまいがち。その思いはとても大事なのですが、あくまでビジネスとして、きちんと収益モデルとして成り立たせることが今回のゴール。そのため、吉松も私自身も、学生とコミュニケーションをとる際にこのことを意識していました。
オフィスでのグループワーク日程が終った後も、それぞれ連絡をとりあい、適宜集まったりオンラインミーティングをしたりしながら、チームでのプランをブラッシュアップしていきました。
- 最終日のプレゼンテーションはいかがでしたか。
田中: 十日町市長様や芸術祭の実行委員の方、オフィシャルサポーターの方々に審査員としてお越しいただき、彼らの前でビジネスプランの発表を行いました。
順位付けなどはせず、審査員の皆様に「いいね」「う~ん」の2種類の札を上げていただき、それぞれコメントをいただくという形をとったのですが、総じて評価が高く、条件が整えばすぐにでも事業化したいとのフィードバックをもらったプランもいくつかありました。
▼学生から提案のあったプランは、こちらのページにてご覧いただけます▼
大地の芸術祭×アイスタイル インターンシップ活動報告
苦しさと楽しさが共存する、リアルなビジネス体験
―芸術祭の運営側からの評価は高かったのですね。参加学生の感想はいかがでしたか?また、田中さんご自身は振り返ってみてどうですか。
田中: 学生からは、難しかったという意見が多かったです。これは、ポジティブな意味だと捉えています。現実に直面している課題に取り組むことは、仮定のテーマに取り組む場合とは異なり、現実的な制約が出てきます。その制約の中でビジネスプランを考える困難さがあったようです。しかし、本当に社会のためになることをやっているという実感が持てたという意見や、事業を企画するということのリアルを体験できたという声があがるなど、非常に満足度は高かったようです。
アイスタイルという会社も世のなかの課題を解決するために事業を行ってきましたが、ビジネスの世界は理想論だけでうまくいくものではありません。実際のビジネス環境はとても複雑で制約も多いものです。そんななかで試行錯誤していく苦しさと楽しさを、参加学生のみなさんに体感してもらえたのではないでしょうか。
私自身は普段、採用担当として仕事をしていますが、日々学生さんと接するなかで、社会に出る前にリアルなビジネスを体験することの意義を強く感じていました。そのため、今回インターンシップという形で機会提供できたことは非常に嬉しく思います。私たちもこの経験を活かし、また新たな取り組みを通して、学生のみなさんへの機会提供にチャレンジしていきたいと思っています。