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多様化する体験価値。店舗と人材に求められることは、どう変わっていくのか?

October 24,2019

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こんにちは。アイスタイルキャリアの塚原です。

9月26日に開催いたしました@cosme Partner Conference 2019のパネルセッションでテーマとなった「これからのブランドと生活者の関係性づくり」について、小売×人材の観点でお話ししたいと思います。

 

@cosme storeを運営する株式会社コスメネクストの代表も務めるアイスタイルSenior Vice President遠藤が、今期より美容業界の人材サービスを提供するアイスタイルキャリアの代表取締役に就任したこともあり、同取締役田中がリアル店舗と人材(美容部員)についてインタビューした内容をご紹介します。

@cosme storeを運営して12年目。新たなリテールテックも取り入れた新体験フラッグシップショップ@cosme TOKYOのオープンを控え、これからの店舗に求められることと人材の在り方について語っています。

Senior Vice President 遠藤 宗(写真右)はアイスタイルグループのBeauty Serviceセグメントを管掌する立場として、生活者の購買行動の変化をどうとらえているのか。アイスタイルキャリア取締役 田中 大介(写真左)がインタビュー。

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目次

【1】ECの台頭に伴うリアル店舗の動向は?

【2】テクノロジーの進化によって、店頭の人材はどう変わっていくべきか?

【3】リアル店舗と人だからこそできる、価値提供をし続けられるために

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【1】ECの台頭に伴うリアル店舗の動向

田中

この10年で化粧品メーカーさんの多くが独自で直営のECを持つようになりましたが、デジタルへの投資に力をいれるだけでなく昨今は直営のリアル店舗を出店するという傾向も増えてきています。メーカーさんが直営店を持つ意図や背景は何だとお考えですか?

 

遠藤
メーカーさんにはものづくりの想いを伝えたいというのはもともとあって、リアルなビジネスをやってきたからこそネットだけでは伝えきれないリアルな場でお客様に伝えたいという想いが高まってきたんじゃないかな。
ECによってブランドを知ることから購入までの距離感は以前に比べてぐっと近づいてきていて、興味が湧いたらそのまま買うこともできる。だからこそ、ブランドが大事にしていることをよりダイレクトに伝えたいのはすごくあるとは思う。

 

田中
それを体現しているのがたとえばコンセプトストアでしょうか?既に販路も流通量も膨大な、大手メーカーさんのコンセプトストアの出店が増えてきているのはリアルな場での体験を通じて自分たちの想いをよりダイレクトに伝えたいからなのでしょうか?

 

遠藤
それはあるだろうね、ただ一概には言えないけれど以前と変わってきているのは、コンセプトストアも売上を求められるようになってきているんじゃないかな。一例として、店舗では売らなくてもいいかもしれないけれどECへ誘導することがKPIになっていたり、商品に触ってくれればいいだけではなく売上に繋がるステップのなかにいるかは大事にしているよね。

一方でメーカーとして商品のこだわりやブランドコンセプト、ものづくりへ想いを伝えるのは小売業に任せるのではなく自分達発信でやりたいというメーカーさんもある。

田中

確かに、テクノロジーの進化で可視化できるポイントが増えたなと思います。店舗の役割としてECなど店頭以外での売上やPR効果に波及しているということをメーカーさん自身が認識できるようになってきていますが、そこに付随するはずの店頭の販売員の価値についてはまだ可視化できていないものが多くあります。店舗の在り方が変わりつつある中、これまでの考え方で単純に人件費を抑えて収益性を高めることって限界があると思っています。

一方で人件費を掛けながら収益性を求めることや、ブランドの顧客のLTV(顧客生涯価値)を高めることには店舗運営のノウハウがより求められていると感じています。

アイスタイルキャリアでは店舗運営代行事業も行っています。店舗の全人員の採用、教育から日報・週報でのレポート報告・各種メンテナンスまで店舗運営に関わる全般の代行が可能です。@cosme storeでの教育ノウハウを取り入れた育成力と、アットコスメキャリアの採用力で店舗運営を強力にバックアップします。

遠藤
トレーニングを受けた人が、商品力だけじゃない価値提供をできているからブランドは成り立っているんだと思っている。長い年月を経て今も支持されているブランドは、人がコミュニケーションによってブランドを作りあげてきたんだと思うし、購買がECにシフトしてもリアルな店舗でそういうことを大切にしているブランドは顧客を維持できているよね。短期的に人件費や収益性だけを追求して、たとえば入社したばかりのアルバイトスタッフにいきなりお客様の肌を触らせるかというと知識もないのにできるわけがない。もしそんなことを続けているといつかブランドが崩れてしまう。

【2】テクノロジーの進化によって、店頭の人材はどう変わっていくべきか?

田中

モノからコトへ、コトからヒトへという生活者の消費行動の変化がある一方で、そういう意味で店頭の人材についてはまだまだ見直せていないですよね。店舗はイベントの実施やテクノロジーを活用したカウンセリングなどさまざまな形でブランドの価値を体験できる新しいコミュニケーションの場になってきていて、商品のことはもちろんブランドの想いや会社のことを語れないといけなくなってくると思います。店舗の変化と共にそういう役割も担っていくとなると人材に求められるスキルなどの変化もあるのでしょうか?
アイスタイルグループで言うと、@cosme TOKYOはアプリとの連動やお客様単位での台帳システムなどさまざまなリテールテックの活用によってより楽しいと感じていただける新たな体験がたくさんありますよね。では、これまでの@cosme storeと@cosme TOKYOでは求められる販売員はどう変わるのでしょうか?

遠藤
変わらないね。リアル店舗に必要なポイントは一緒で、お客様の味方でいられるかどうか、お客様にちゃんと寄り添えるかどうか。お客様がお店にいないときでもできることは何か?というとチャットによる接客。売るためじゃなくお客様の味方だからする、つまり売れる人じゃなくて味方で寄り添ってあげられる人であることが大事だと思う。そのために、デジタルという手段をどう使うかだけだね。

たとえばアマゾンブックストアはスタッフがすごく楽しそうに接客しているんだよ。なぜなら売る責任がない、会計しなくていいから。売ることじゃなくお客様に寄り添うという姿勢だからお客様と販売員の距離感が変わってくる。さっき大介が言ってた、モノからコトへ、コトからヒトへ、のヒトの話はこういうことだと思う。お客様が本当にどう思っているのかを察してどういうサポートをすればいいかを考えて、寄り添える人がリアル店舗に立つ販売員の価値。

 

売上は結果論で、大事なのはそのプロセスや継続してお店にまた来てくれるかどうか。店舗ってお客様が時間やお金を使ってわざわざ移動して来て下さっているんだから、買わされるために行っているわけではないよね。自分によりパーソナルに向き合ってほしいから来てくれている。肌の知識、商品の知識、メイクの技術はもちろんだけど、何よりそれらをベースにお客様に寄り添えるか。

我々のビジョンの “生活者中心の市場創造” ってそういうことで、生活者側に立って市場を創るのは店舗も同じ。そこは@cosme storeという店舗でもアイスタイルキャリアのスタッフとしてブランドの店頭に立つ人も忘れちゃいけない。アイスタイルグループが提供するサービスはそうであるべきだよね。

 

田中

2007年に@cosme storeをOPENしてすぐできたチャレンジ11がコスメネクストの行動指針だと思いますが、10年以上たって、新業態の@cosme TOKYOでも大事なことが変わらないってすごいことですね。

チャレンジ11…@cosme storeを運営する、株式会社コスメネクストの行動指針。正社員もアルバイトも派遣社員も皆が行動・思考の基本においています。実は、この行動指針に共感して入社したスタッフも多数いるんです。

遠藤

大事なことやスタンスは変わらないよね。もちろんレイアウトなどのハード、表現の仕方は変わるよ。いまのお客様にとってより心地よく思えるように、お客様にとって楽しいと思えるお店であるように変えることは必要。それができない店舗は利便性でECには勝てない。お客様に寄り添うことの意味をリアル店舗がもう一度考え直した方がいいと思っている。

たとえば、お客様がお店に入ったときに台帳のデータがスタッフに共有されて、「○○さん」ってお客様に声を掛けることができるようになったらどうかな?自分のことをそこまで認識してくれてるようなお店からは離れていかないと思うんだよね。アナログとデジタルで方法論は変わるけど寄り添うことは変わらないから昔DMを書いていたのがLINEやメッセージに変わるだけ。よりリアルタイムでできて、満足度がより高まるようにテクノロジーが進化してくれたから使わない手はないよね。ただ、前提としてモノを買うときってその人の利便性やコンディションによっていろんなお店を使い分けているから、必ずその人が化粧品を買う時の選択肢に入っていることが大事かな。

@cosme TOKYOのイメージパース。過去最大に充実したブランドラインナップでポップアップスペースやライブ配信スタジオを設置、3Fにはイベントスペースも常設。

田中

異業種では決済が便利になったりして販売員・人を減らしていくことがテクノロジーの進化によってもたらせた良さだと言われることもあるが、違うんでしょうか。

 

遠藤
違うね。人がいないお店は何も楽しくない。アリババのスーパーは会員になればECで購入すると30分で届くからEC売上も大きいんだけどリアルの店舗もすごく楽しいの。リアルの店舗があるからこそ、ここで買いたいと思ってみんなECで買うし、何かを見たいときってわざわざお店に来るんだよ。お店には料理を作っているライブ感もあってすごく活気があったね。

 

田中

異業種で悩みや迷いが発生しない商品なら販売員・接客がテクノロジーで代用できるかもしれないけど、化粧品においてはそうではないですよね。

 

遠藤
程よい迷いがあるのってつまり選ぶ楽しさがあるし、迷いを払拭するために人は必要。もちろん@cosme storeでは@cosmeでの人気商品がわかるけれど、自分の肌にどれがいいんだろうって本当に悩んだとき、人に聞きたいよね。ちゃんと相談できる相手であるのってリアルの店舗にあるべき姿だと思う。

【3】リアル店舗と人だからこそできる、価値提供をし続けられるために

田中

可視化できていない状態ではあれど、やはり明確な価値があるということですね。テクノロジーに代替できない価値がある一方で、販売員(美容部員)になりたい人が増えない要因は何だと思いますか?

 

遠藤
販売員の地位だろうね。大変なこともあるけど、たくさんの人に喜びを与えていると思う。化粧品って人の人生を変えられるような仕事だからその価値ってもっと高くあるべきだなと思ってる。

田中

僕たちアイスタイルキャリアは “美容業界の人材が働き「続ける」ことに自信が持てる世界を”というミッションを掲げているので、そこには様々な課題があると思っています。では、どうやってその価値や水準を上げていけるか。たとえば給与水準などは価値を示せる材料になると思いますか?

 

遠藤
もちろんお金の話は大事だけど、まず何よりも販売員を抱えている僕らがそのスタンスを絶対に忘れないことだと思う。それなくして、店舗に立っている一販売員とした瞬間に人件費を下げればいいという発想になりかねない。人件費を抑えて戦力化できれば素晴らしいと思うけどそんな短期的に習得できるレベルの仕事ではないよね。人の肌に触る仕事って医師と美容部員くらいでしょ?すごく素晴らしい仕事であるということを会社としてどうサポートするのか。会社側がちゃんと考えてメッセージを発信していかないと、ここで頑張りたいと思ってもらえない。様々なブランドで活躍してくれている販売員が、アイスタイルキャリアの一員だから頑張ろうと誇れるために、アイスタイルキャリアの人材として価値を高めていくために、いままさに取り組んでいる教育への投資や機会提供をしていくことが必要だと思う。
リアル店舗での買い物ってECよりもがアドレナリンが上がることが科学的に証明されているんだけど、ECのほうが価格の比較を慎重にしやすいから買い物は冷静。@cosme storeはプチプラの価格帯の商品も定価で販売していて、実はちょっと歩けばドラックストアで安く買える商品もあるのに買っていただけている。そういうこともたくさんの人に喜んでいただける、人の人生を変えられるような仕事の価値だなと思ってる。

 

田中

モノだけを求めているだけなら他のお店で買ってもいいんでしょうけど、お客様にとって気持ち良い寄り添い方や販売員が出してくれているバリューを感じてもらえているからですね。

 

遠藤
お客様の味方になれるためにまだまだ努力は必要だけれど、売ろうとしないっていうことを@cosme storeのみんなは十分理解してくれている。迷っていたら「今日買わなくてもいいんじゃないですか」って言おうっていうことも理解してくれている。結果、多くのお客様がまたあのお店に行こうか、相談に乗ってもらおうかと足を運んでくださる。他のお店で買った商品を持ってきて私に合っているのか?とうちのお店に相談に来ていただけていることもあるくらい。うちのお店にないものなら一緒に探すし他のお店を紹介して在庫の確認までしていたからね。

 

田中
2007年の1号店オープンから12年、今では国内でも23店舗、海外含めると33店舗という規模ですが、そういうスタンスの確立って教育・育成によって成しえていることなんでしょうか?

 

遠藤
会社としての明確なメッセージとしてちゃんと伝えていく、ずっと、ずっとずーっと伝えていくことで、だね。@cosme storeのスタッフも、みんなもちろんそれまでは他社のスタッフだったから、採用の時点でそこを求めなくてもいい。人は変われるから。こうあるべきだ、こうやっていこう、寄り添うってこういうことじゃないのかということを言語化してチャレンジ11を作って、売らなくてもいい買ってくれなくてもいいから気持ちよく帰ってもらおうと12年言い続けて今があるんだよね。

 

田中

チャレンジ11のように言葉にしてあげること、いろんな形で表していきながら浸透していく状態でいまがあるということですね。海外の店舗も同様の教育でしょうか。

 

遠藤
同じだね。お客様の味方でいよう、味方ってどういうこと?って言いながらトレーニングしている。国内も海外もその方が心地いいのは間違いないよね。コンセプトストアであろうが、極論セルフの店舗だろうがだろうが本来のスタンスは変えちゃいけないって思っている。
僕たちは、全ては生活者中心の市場創造を体現するためにあるわけだから。

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こちらのブログ記事もご参考に。

これからの小売業に必要なこと~事業責任者×社外取締役インタビュー~

@cosme storeの若手美容部員が語る、就活アレコレ

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PROFILE

entrance2_加工済みです

Hajime Endo

株式会社アイスタイル Senior Vice President

2007年1月株式会社コスメネクスト設立時より取締役に就任し、アイスタイルグループに参画。2014年7月代表取締役社長に就任。2015年7月より株式会社アイスタイル執行役員、2018年7月からはSenior Vice Presidentに就任。
これまでアイスタイルグループにおける国内外の流通事業全般を統括。株式会社コスメコム、株式会社アイメイカーズ、株式会社アイスタイルトレーディング代表取締役社長を歴任し、現在は海外の@cosme storeを運営する Retail (Hong Kong) Co., Limited、istyle Retail (Thailand) Co., Limited、istyle Trading Korea,Inc、と株式会社アイスタイルキャリア代表取締役社長を務める。

tanaka

Daisuke Tanaka

株式会社アイスタイルキャリア 取締役

2012年新卒入社。広告営業、人事、メーカー事業のマーケティングを経て2018年7月より現職へ。 “美容業界の人材が働き「続ける」ことに自信が持てる世界を”という、美容業界の人材に特化した事業に従事。

tsukahara

Mayumi Tsukahara

株式会社アイスタイルキャリア マーケティング部

2015年中途入社。サロンサービス開発部、クオリティ&サステナビリティ室を経て2019年4月、現職へ。(本ブログ執筆者)

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