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【ビューティテック最前線】
第6回:VR技術が根底から変える美容体験
(国際商業8月号)

July 19,2018

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アイスタイルでは、ミッションである「ビューティ×ITで世界ナンバーワン」の実現を目指してグローバルに事業を展開しています。その中で、昨今世界の美容業界で盛り上がりを見せるBeautyTechの動向には以前から注目してまいりました。海外のグループ会社も増えてグローバルトレンド情報もいち早く入ってくるようになり、これらの情報を何らかの形で発信できないだろうか、そんな議論を積み重ね、@cosmeの編集ノウハウを活かす形で新たなメディアとして、今世界の美容業界で話題のBeautyTechを中心とした美容業界のイノベーショントレンドを配信する専門メディア「BeautyTech.jp」を立ち上げました。

そんな「BeautyTech.jp」の編集部は、「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「ビューティテック最前線」というタイトルで連載させていただいています。

国際商業とは・・・

1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。

 

http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

今回は2018年7月6日発売、国際商業8月号に掲載されたものをご紹介します。

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VR技術が根底から変える美容体験

実際にリアル店舗(オフライン)でビューティアドバイザーと会話を楽しみながら化粧品を買う体験、オンラインでさっと目当ての化粧品を買う体験。そのどちらにも良さがあり、オフラインとオンラインの購買体験をどれだけシームレスにし、豊かにするかを考える企業は多い。しかし、VR(仮想現実)は、その購買体験を根底から変えてしまうといっても過言ではない技術だ。スキーゴーグルのようなディスプレイを装着し、左右それぞれの画像で立体視ができる。自分があたかも違う空間にいるような体験ができるのだ。

 

とりわけ、去る5月1日に発売されたスタンドアロン型と呼ばれるVRヘッドセットのOculus Goは、これまでPCやスマホなどとの接続が必要であったものが、このゴーグルさえあれば、1000タイトル以上のVRコンテンツを利用できる。
なかでも特筆すべきはOculus Roomsというアプリだ。VRの中で、自分のアバターを使い、友人でも同僚でも、仮想の部屋で話ができる。これを使うことでの「実際に会って話す感じ」が実にリアルなのだ。これは仕事でも使える、といった声が多いのもうなずける。不思議な空間で、それぞれ自分自身とは似ても似つかぬアバターであるにもかかわらず、立体音響で声の響きが自然なこともあるせいか「一緒に同じ空間にいる」感じで一気に距離がちぢまる。音声通話や、FaceTimeのように、スクリーン越しの通話はある程度の距離感があるが、Oculus Roomsでのコミュニケーションは直接会って話すのと同じくらいの「近さ」を感じる。

 

ビューティアドバイザーと遠隔で会話して購入

このアバターがもう少し自分に近くなり、風景もカスタマイズされれば、自宅にいながらにしてビューティアドバイザーと会話を楽しみ、美容アドバイスをもらっての購入が現実となるだろう。ビューティアドバイザーも出勤する必要がなくなるかもしれない。自宅でパジャマのままで接客が可能なら、働き方「大」革命だ。これをまっさきに実現する化粧品ブランドはどこになるのだろう、と想像をしてみたりする。

 

美容業界のVR活用はロレアルがトップランナー

いまのところ、化粧品業界でVRを一番活用しているのは、といえばやはりロレアルをおいてはないだろう。傘下のブランド・NYXが2017年にサムスンと提携し、ショップ内でVRゴーグルを使ってメイクアップチュートリアルが見られるサービスを行うなどのユーザー体験だけでなく、美容師のトレーニング、さらに業務改善、業務プロセス改善までVRを活用しはじめている。
トレーニングでは大人数の移動や収容会場などの制約もなくなり、業務プロセスではマニュアルを読むより直感的にわかりやすく「体験」型で習得できるメリットははかりしれないだろう。ここまでのレベルでVR技術を取り入れ、全社で親しんでいるという取り組みには、ただならぬ本気度を感じる。しかもスタートアップではなく老舗大企業の取り組みなのだ。

Photo by Marc Mueller on Unsplash

その場でデザイン、試着がバーチャルで可能に

美容業界ではないが、ナイキはARとVRを組み合わせたサービスを昨年9月より行なっている。ARを使ってオーダーメイドのスニーカーをデザインしながら試着、注文すればその場で90分以内に作り上げるNike Makers’Experienceという招待制のサービスだ。ARで試着し、商品を短時間で作り上げてリアルな存在として生み出される過程をVRで楽しめる。若い女性たちに人気のメイクアップシミュレーションもAR技術だ。ナイキのサービスは、仮想空間の中でどこまでリアルにメイクやスキンケアアドバイスができ、商品もカスタマイズしていくことができるかという将来の姿を映し出しているようである。

 

遠隔で手術が可能なら遠隔でメイクアップもできる

医療では、外科手術の現場でもVR技術が使われはじめており、患者の手術部位をあらかじめ3Dモデル化し、VRゴーグル上でそれを確認しながら執刀することで手術の精度を高めているという。
さらに、イギリスのRoom Oneという企業はVRヘッドセットと触覚を再現する手袋、そしてロボットアームを使い、医学生向けに「臓器に触れる感触」をVR体験させるという試みを行なっている。
遠隔操作のロボットアームが臓器に触れると、その反応のデータがネットワーク経由で手袋に送信され、それをはめた医学生に感触を伝えるという仕組みだ。この技術が進化すれば、遠く離れた場所にいる外科医に遠隔手術を受けることが可能になる。

 

ひとりの天才のメイク技術を自宅にいながら楽しめる時代

こういった事例も美容業界が採り入れられる可能性は大きい。遠隔手術が可能なら、遠隔のメイクアップやフェイシャルサービスが可能なはずだ。東京にいながらにして、ニューヨークのメイクアップアーティストにトレンドメイクをしてもらうことも可能なはずで、さらに言うなら、そのアーティストの技術そのものがAIロボットで実現できるようになれば、ひとりの天才の技を世界中の人が享受できることになる。Oculus Roomsのちょっと不思議な異空間でしばしの間、想像にふけった未来の美容サービスだ。

 

BeautyTech.jp編集部
矢野貴久子
https://beautytech.jp/

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国際商業 2018年8月号より転載

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PROFILE

170810矢野

Kikuko Yano

BeautyTech.jp編集部 

雑誌編集、ネットメディア立ち上げを経て、プロデューサーとして、さまざまなネットメディアの編集、デジタルマーケティングに関わる。
Beauty Tech.jpは、サイト立ち上げ準備からプロデューサーとして陣頭指揮を執っている。10歳の息子との戦いごっこで体力づくりの毎日。

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