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【ビューティテック最前線】第21回:美容トップ企業2019年上半期 デジタル・事業開発戦略のまとめ(国際商業11月号)

October 8,2019

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アイスタイルでは、ミッションである「ビューティ×ITで世界ナンバーワン」の実現を目指してグローバルに事業を展開しています。その中で、昨今世界の美容業界で盛り上がりを見せるBeautyTechの動向には以前から注目してまいりました。海外のグループ会社も増えてグローバルトレンド情報もいち早く入ってくるようになり、これらの情報を何らかの形で発信できないだろうか、そんな議論を積み重ね、@cosmeの編集ノウハウを活かす形で新たなメディアとして、今世界の美容業界で話題のBeautyTechを中心とした美容業界のイノベーショントレンドを配信する専門メディア「BeautyTech.jp」を立ち上げました。

そんな「BeautyTech.jp」の編集部は、「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「ビューティテック最前線」というタイトルで連載させていただいています。

国際商業とは
1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。
http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

今回は2019年10月7日発売、国際商業11月号に掲載されたものをご紹介します。

 

2019年の上半期、グローバル美容トップ企業がテクノロジーと事業開発分野でどのような動きだったのかを、今回は振り返ってみたい。

「ビューティーパッケージング(BeautyPackaging)」誌の「トップ20グローバル・ビューティー・カンパニー」の上位6社をピックアップした。1位から順にロレアル、ユニリーバ、エスティ ローダー、P&G、コティ、資生堂だ。それぞれ発表資料からの動向を見ると、世界の消費動向を動かすミレニアル世代に焦点をあて、ラグジュアリーとEC市場獲得ためのM&Aを積極的に推進したり、アマゾンなどのデジタル企業を意識し、リアルとデジタルをシームレスに融合するなどの施策が目をひいた。

ロレアル:リアルとバーチャルの徹底統合

2018年12月決算は、売上高269億3740万ユーロと、07年以来の最高額を達成。その裏には、10年にわたるデジタル変革計画があり、この間、2500名の専門家を採用するだけでなく、従業員2万7000人のデジタル教育を実施した。アライアンスやデジタル投資も積極的で、5月の「ビバテクノロジー2019パリ」ではアリババと共同開発したモバイル用ニキビ診断アプリを発表した。

企業の社会的責任として、環境への配慮や地域社会への貢献活動なども推進しており、PETプラスチックリサイクルはもちろんのこと、〝持続可能な小売り〟という目標を掲げ、店舗デザインやPOS広告をも対象にサステナビリティ活動を行っていることなどが評価され、世界で最も倫理的な企業や国際環境評価団体よりAAA評価を受けた。

ユニリーバ:プレミアムとナチュラル領域をM&Aで強化

2019年はCEOの交代、ビューティ・パーソナルケア事業のトップにアマゾン出身者を迎えるなど、デジタル時代の競争力を付けるための人的資源の強化を図っている。また、M&Aでプレミアムビューティ&ナチュラル領域を拡充し、1製品あたりの売り上げ・利益増加を狙っている。

発表されたM&Aは全部で6件あり、美容関連では仏ブランドの「ガランシア(Garancia)」、米国のラグジュアリースキンケア「タチャ(TATCHA)」を傘下に収めた。その他の案件もエコロジーやヘルシーを意識したM&Aだ。新興国が好調だったこともあり、上半期のビューティ・パーソナルケア領域の売上高は162億ユーロで、3・3%増。

ユニリーバが買収したTATCHAのスターターキット(2019年8月現在)

ユニリーバが買収したTATCHAのスターターキット(2019年8月現在)

エスティ ローダー:テックと人の融合で顧客体験向上

顧客が自分に最適な製品を見つけることをサポートし、満足度の高い購入体験を提供することに重きを置くエスティ ローダーは、美容部員をインフルエンサーとして活用しながら、AIを活用したパーソナライズ化を進めている。

19年上半期は、大きなデジタル・事業開発関連の発表はなかったが、2019年第3四半期の売り上げは37・4億㌦と11%の増加。株価も上半期だけで約39%伸びており、株式市場でも好調さが目立った。

P&G: 社会課題提起のマーケティングで消費者の心をつかむ

製造コストの上昇などから値上げ戦略を実行し、消費者離れが懸念されたが、社会課題にスポットライトをあてたデジタルキャンペーンが顧客に響き、結果はビューティは対前年同期比3%の成長で300億ドルだった。

広告価値毀損問題からブランドを守るために、マス向けのデジタル広告への支出割合を下げ、自社主導のキャンペーンを中心にマーケティングを行っている。中でも、多様性や包括性、アクセシビリティの重要性を問うコンテンツをメディアを通して発信し、社会での議論を促進する姿勢に消費者が共感している。

コティ: 大胆な再生計画を」発表、不採算事業整理へ

新CEOのもと、コンシューマー事業の立て直しに注力していたが、経営幹部の離職や株価低迷などが続き、3月31日に発表された第1四半期売上高は19億9000万㌦で、前年同期比10・4%減。市場からの圧力を受け、7月に大胆な再生計画を発表した。今後は、ラグジュアリーとプロフェッショナルブランドを軸に成長領域を模索しながら、コンシューマー・ビューティなどの不採算事業の整理をする。年内に30億㌦相当分のブランドを売却するとしている。世界トップ10ビューティ企業に残るための踏ん張りどころを迎えている。

資生堂:戦略提携を通じアジア市場強化へ動く

19年上半期は、中国・アジア市場強化を戦略提携によって実現しようと積極的に動いた結果が出た。中国事業強化のため、アリババとの戦略的提携を実施し、中国に「資生堂×アリババ戦略連携オフィス」を新設。アリババとの協業で新ブランドの立ち上げも予定しており、9月に天猫(Tモール)でヘアケア・ボディブランド「アクエア(AQUAIR)」を発売予定だ。

この動きの背景には、EC売り上げを4割へ引き上げるためアリババの持つビッグデータや販路を活用することで目標を達成する狙いがある。また、アジア市場での事業拡大に向け、世界最大のドラッグストアチェーンであるASワトソングループと戦略提携をし、「dプログラム」新シリーズを共同開発した。台湾、タイに続き中国でも販売予定で、今後他のアジア各国で展開予定と、アジア市場獲得に向けて動いている。

 

BeautyTech.jp編集部
矢野貴久子
https://beautytech.jp/

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国際商業 2019年11月号より転載

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