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【ビューティテック最前線】第17回:デジタル化をリードするCDO発掘の三つの方法(国際商業7月号)

July 8,2019

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アイスタイルでは、ミッションである「ビューティ×ITで世界ナンバーワン」の実現を目指してグローバルに事業を展開しています。その中で、昨今世界の美容業界で盛り上がりを見せるBeautyTechの動向には以前から注目してまいりました。海外のグループ会社も増えてグローバルトレンド情報もいち早く入ってくるようになり、これらの情報を何らかの形で発信できないだろうか、そんな議論を積み重ね、@cosmeの編集ノウハウを活かす形で新たなメディアとして、今世界の美容業界で話題のBeautyTechを中心とした美容業界のイノベーショントレンドを配信する専門メディア「BeautyTech.jp」を立ち上げました。

そんな「BeautyTech.jp」の編集部は、「月刊 国際商業」という業界を代表する専門誌にて「ビューティテック最前線」というタイトルで連載させていただいています。

国際商業とは
1969年、化粧品および日用品の専門誌として創刊。川上のメーカーから川下の小売業の市場概況や経営戦略や関連省庁の動向・問題点など多岐にわたって情報発信するとともに、業界の発展に寄与すべく諸提案を続けている月刊誌です。
http://www.kokusaishogyo.co.jp/kokusai_syougyo/

今回は2019年6月7日発売、国際商業7月号に掲載されたものをご紹介します。

デジタル化をリードするCDO発掘の三つの方法

2015年ごろから、日本国内では、企業の生き残りをかけデジタル変革を経営者の視点で推進する「チーフ・デジタル・オフィサー(CDO=最高デジタル責任者)」の登用の動きがある。それは〝デジタルディスラプター〟と呼ばれる、デジタル技術を駆使して破壊的なイノベーションを起こすアマゾンのような企業と競争していく上で、伝統的なビジネス手法から、デジタル時代への変革が必須だからである。そして、それをリードするCDOという存在が不可欠なのだ。

 

海外ではすでに数千人のCDOがいるといわれ、日本では日本ロレアルが最も早く15年にCDOを置いたものの、美容業界においてCDOはまだ少ない。
CDOの役割は、自社のデジタル変革を推進し、ビジネスモデルを新しく考え、実現していくことだ。そのためCDOには、戦略立案から、社内を巻き込む力、プロセスの革新と運用の基盤構築など、技術だけでなくビジネスに対する幅広い対応能力と経験が求められている。

たとえば、14年にロレアルのCDOに登用されたルボミラ・ロシェ氏は、ビジネスとデジタルの両方のスキルを持つ人材として有名だ。しかし、彼女のような人材は日本では限られている。そこで、CDOをどのように見いだしたらよいのか、デジタル分野における世界初の5000人以上のデジタル分野の経営陣やストラテジストが参加するコミュニティ「シーディーオー クラブ(CDO Club)の日本の窓口である一般社団法人シーディーオー クラブ ジャパン(CDO Club Japan)の代表理事を務める加茂純氏に話を聞いた。

 

※※※

 

企業変革を起こしていけるCDOを見つける方法があるとして、加茂氏は三つのパターンをあげる。

 

その1 CIOからCDOへ

海外では、マーケティング出身者がCDOとなるケースもよく見受けられるが、「(日本の)マーケティング出身者にはデジタル技術のことを知らない人が多い傾向がある。マーケティング部門から探すよりもシステム部門から探す方が(良いCDOとなる)確率は高いだろう」と加茂氏は言う。例えば、発動機や農機、建機、小型船舶などの製造・販売を行うヤンマーは、13年にパナソニックから矢島孝應氏をCIOとして招へいし、現在は責任範囲を拡大して、CDOとしての役割も担っている。

 

その2 社内に幅広い人脈を持つ人材を登用

「デジタルに強い人がいない場合は、社内に幅広い人脈を持ち、好奇心や学習意欲が強い人をCDOにするという手もある」(加茂氏)
デジタルやテクノロジーで社内変革を起こす際は、多くの社員をプロジェクトに巻き込む必要があるので、社内の横のつながりが強く、どこの部署や組織にも自由に入っていける人がCDOとして成功するケースもある。デジタルに関する知識は、社外のセミナーや勉強会、研修などで学べる。また、コンサルタント等の外部人材をアドバイザーとして雇うことで、その部分を代替することが可能だ。しかし、全社を巻き込むには社内の協力が不可欠で、外部の人間ではスピーディーにやりきれないケースがある。デジタル知識は後付けで構わないと割り切ることも大切だ。

一般社団法人CDO Club Japan 代表理事 加茂 純(BeautyTech.jp編集部撮影)

その3 適任者を外部から採用

SOMPOホールディングスや三菱ケミカルホールディングスのように、適任者を外部から探してきて採用する例も少なくない。Japan CDO of the Year 2017に選ばれたLDH JAPANのCDO、長瀬次英氏も、インスタグラム日本事業代表責任者などを経て、日本ロレアルのCDOを務めた経験を持つ。外部採用の場合は「その2」でも挙げたように、社内のサポート体制をどのように構築するかが肝となる。

 

最後に、CDOが真のデジタル・トランスフォーメーションを実現するためには、CDOを支える専門組織を構築することを加茂氏は推奨している。企業規模にもよるだろうが、立ち上げ初期は10名ほどのチームで構わないが、本格的に変革を行っていくには、最低30人の専属が必要だそうだ。

この専門組織で、社外への広報活動、社内を横断的につなげる変革プロジェクトの推進、ビジネス戦略立案、データ分析などを行う。ビジネス系人材にプラスして、データ系の人材も不可欠で、社内事情に明るい人材をパイプ役として配置することもポイントだ。変革には一般的に5〜10年の期間がかかることが多く、長期にわたる経営陣のコミットメントが必須なのはいうまでもない。

 

サントリーなどは現場からデジタル変革を起こすことを掲げ、CDOという職種はあえておいていない。しかし、社内では多数の変革プロジェクトが走り、社内外から優秀な人材を集めている。したがって、すべての企業がCDOを置くべきとは言えないであろうが、それぞれの組織にあった形で、自分たちの組織にとってデジタル化はどのような意味を持つのか、今後どう競争環境が変わるのか、その過程で生き残るために、自分たちはどう変わり続けていくべきかを考え、変革に取り組んでいく必要があるのだ。変革するか、それとも消えるか? 企業は岐路に立っている。

 

BeautyTech.jp編集部
秋山ゆかり(経営コンサルタント)
https://beautytech.jp/

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国際商業 2019年7月号より転載

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PROFILE

秋山さん

BeautyTech.jp編集部 アドバイザー

戦略・事業開発コンサルティングの株式会社Leonessa代表取締役。イリノイ大学情報科学部・統計学部卒業。奈良先端科学技術大学院大学工学修士。ITエンジニア、ボストン・コンサルティング・グループの戦略コンサルタントを経て、GE Internationalの戦略・事業開発本部長、日本IBMの事業開発部長を歴任。明治大学サービス創新研究所客員研究員。芸術思考学会副会長。

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